これは「オポッサム」というちょっと不思議な生きもののおはなし。 というより「オポッサム」をめぐる人間たちの、奇妙なはなしといっていいかもしれません。
ある森に、一匹のオポッサムが住んでいました。 いつもにこにこ笑っている、ごきげんなオポッサムです。 高い木にのぼると、枝にしっぽをくるくるとしっかり巻きつけて……。 ぷらんとさかさまになり、にこにこしながら何日か過ごします。 オポッサムなら誰でもこうするんだそうですよ。
オポッサムはにこにこ、にこにこしています。 ところがそんなある日、4人の人間がやってきて、にこにこ顔のまま逆さまに木にぶらさがるオポッサムを見ておかしなことをいいはじめるんです。 「かなしそう」「ぜんぜんにこにこしてない」「あいつはきっと、自分がにこにこしていると思ってる、めそめそオポッサムなんだ!」「町へつれて行って、にこにこにしてやろう」 断るオポッサムのいうことも聞かず、とうとう人間たちはオポッサムがぶらさがっている木ごと掘り返し、木といっしょに町へつれて行ってしまうんです……。
さて、このおはなしはいったいどうなるのか? 続きはぜひ本を読んでほしいのですが、とにかく、個人的には、何ともいえない居心地のわるさと、むずむずした感じが残りました。 森の中で幸せだったのに、勝手な思い込みで、騒々しく、ふきげんな人間だらけの町に連れて来られたオポッサム。 それでもにこにこしているオポッサムを、めそめそオポッサムだと決めつけ、“自分たちの力で”“自分たちが考える”“にこにこオポッサム”にしてやろうと奮闘する人間たち。
しかも人間たちが「あいつは、めそめそオポッサムだ!」と思い込む理由ときたら……。 読んだらきっと笑っちゃいますよ! 「幸せとは何だろう?」という問いが、心の中に湧いてくる、皮肉なユーモアに満ちた寓話。 ぜひ小学生に手にとってほしい絵童話です。
アニメーション制作や脚本、映画監督など、様々な分野で活躍したフランク・タシュリンが、子ども向けに書いた作品は、『ぼくはくまですよ』(大日本図書)と本作のみ。 小宮由さんの訳で、このたび2冊同時に出版されています。 あわせて手にとってみてくださいね。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
木にぶらさがるオポッサム。 人間たちは下から見上げたので、にこっと笑った口元をフニャっとさがっていると勘違いしました。 「ぼくはにこにこですよ」 「いいや、めそめそオポッサム! しあわせにしてやろう!」 人間たちは、オポッサムを町に連れて行きますが・・・!?
楽しくてわらっちゃうお話。 隅々まで見たくなる挿絵。 年齢によっては、読んだ後に考えるメッセージも受け取れます。
木にぶらさがるオポッサムを下から見た人間たち。ニコッと笑った口元をフニャっとさがっていると勘違いして、「悲しんでるのね、かわいそう!」と町に連れていきますが…。人間とオポッサムとのやりとりがユーモラスなお話です。
思い込みで人に対して行動していないだろうかと考えさせられた絵本でした。 (ぼんぬさん 40代・ママ 女の子6歳、女の子2歳)
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