アイルランド生まれの絵本作家、独特のあざやかな色合いが印象的な、クリス・ホートンの絵本です。
海のそばの、岩の窪みに暮らしているのは、大きなカニカニと小さなカニカニ。 ページをめくると、見開きいっぱいにそびえたつような、黒々とした大きな岩が描かれます。 小さなカニカニは、ある日、窪みから岩をこえて、はじめて大きな海へ……。 といってもそう簡単には行きません。 チョコチョコッと岩をこえ、チャポチャポッと潮だまりをぬけ、ねばねばっとすべりやすい海藻をこえ……ついに海!
大きな波頭が立つ海を前に、「はいらないほうがいいかもね」という小さなカニカニ。 そこへ大波が来て……!?
意気揚々とどこまでもいける!と進んできたものの、荒々しい海に「にがてかも」「もうかえったほうがいいかも」と慎重になるカニカニ。 一歩ふみだしては、手ごたえを感じ、大波をかぶっては、ひきかえしたくなったり。
絵本ならではの盛り上がりの強弱、ページ展開、おはなしのリズムが秀逸です。 とうとう大きな海に入り込んだあとの世界を、ぜひ体験してください! 大判絵本ならではの迫力、すばらしい美しさをあじわえますよ。
「思うに……かもね」ともったいぶったカニカニに、にやっとしたくなっちゃう。 カニカニと一緒に海へふみこんだ、読者の私たちも、とっても達成感をあじわえる絵本です。 だからきっと……読んでみたらいいかもね!
(大和田佳世 絵本ナビライター)
きょうはちいさなカニカニがはじめてうみへいく日。 ちいさなカニカニはおおきなカニカニといっしょに元気いっぱいに出かけますが、うみにつくと、大きな波をみて、こわくなってしまいました。 「しんぱいするなって」とおおきなカニカニがはげましてくれ、ちいさなカニカニは、おそるおそるうみにちかづいていきます。
はじめてのことは、不安がつきもの。でも、すこし勇気を出して一歩ふみだせば、あたらしい世界がまっています。 ちいさなカニカニがはいっていった海の世界は、どんなところだったのでしょう。
『DON’T WORRY LITTLE CRAB』が原題。
主人公のカニたちを、カニカニとしたセンスに唸ります。
海のそばのくぼ地に暮らす、大きなカニカニと小さなカニカニのエピソード。
今日は小さなカニカニが、初めて海に行く日ですって。
初めてのことにドキドキワクワク。
海を見て目を丸くし、波に怖気づき、でも、海デビューの感動で思い切って海に入ると夢中になるのです。
このあたり、日常生活のあるあるではないでしょうか。
「思うに…」と怖気づくたびに繰り返されるセリフが、ラストで見事に逆転。
まあ、大きなカニカニがそばにいてこその経験ですけどね。
独特のデフォルメで描かれたカニカニたちが何とも愉快です。
ドラマチックな波も、きれいな海中の様子も、まさしく絶妙な配色で素敵です。
幼稚園児くらいから、そっと背中を押してくれる快感を味わってほしいです。 (レイラさん 50代・ママ )
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