ねじめ正一さんが、自身の母・みどりさんの介護を通じてつづった俳句を、五味太郎さんがアートディレクターとなって絵本化。「介護俳句」を、これほどアーティステッィクに表現した絵本はほかにありません。俳句を愛する五味さんが、ねじめさんが俳句に込めた思いを読み解き、「俳句を読むための絵本」となりました。綴じ込みリーフレットには、ねじめさんの全30句の解説と、ねじめさん×五味さんの「母」対談を収録。
「俳句絵本」です。
書かれているのは俳句ですが、句集ではなく「俳句絵本」です。
俳句が絵本になることよりも、俳句さえ絵本にしてしまう絵本の懐の深さに驚いてしまいます。
俳句を詠んだのは詩人で『高円寺純情商店街』で第101回直木賞を受賞した作家でもある、ねじめ正一さん。
絵を描いたのは絵本作家の五味太郎さん。
五味さんといえば独特のタッチで数多くの絵本を描いてきた有名な絵本作家ですが、この絵本はそんな五味さんのタッチではなく、ねじめさんの俳句をじゃますることなく、それでいて俳句と寄り添いながら、絵だけ見てても俳句の世界に入れる、そんな世界観になっています。
この絵本で詠まれている俳句は全部で30句。
ねじめさんのお母さんの看護のさまが詠まれています。
例えば、こんな句。「病院の母と二人の雛祭り」。
ベッドで酸素マスクをつけている母を見るのは息子として辛いでしょうが、こうして俳句になればどこか突き抜けた感じがします。
看護の甲斐空しくお母さんは2017年9月に亡くなります。
その時詠んだ句。「九月の酸素マスクの母が逝く」。
こんな句が続きます。「みどりの名酸素マスクの紐に書く」。
タイトルの「みどり」はお母さんの名前だったのです。
では、「なずな」。
お母さんが逝ったあと、ねじめさんに孫娘が生まれます。
その子の名前が「なずな」。
詠んだ句が「母逝ってなずな生まれる宇宙あり」。
そんないのちの句に五味さんは色と形だけで応えている、そんな「俳句絵本」です。 (夏の雨さん 60代・パパ )
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