同時に始まる物語の先に見えるのは……『楽園のむこうがわ』【NEXTプラチナブック】
みどり豊かな島にたどり着いたふたりの男性。森の住人たちに同じように出迎えられたふたりは、海辺にそれぞれに理想の家を作っていきます。見開きページの左側に描かれるのは、白いTシャツをきた男性が作る自然に調和した暮らし。そして右側には、対照的に森を切り拓くことを選んだ、黒いTシャツを着た男性が作る都会的な暮らしが描かれていきます。
鳥の視点で俯瞰で見るそれぞれの暮らし。ページをめくるごとに季節は巡り、周りの景色はどんどんと変わっていきます。左のページではいつまでも近くに動物たちがいます。一方、右のページでは、道ができてたくさんの家が建ち並び、どんどんと便利になっているようです。自分の選ぶものによって、未来が変わっていくという現実を、目で見て実感できます。
添えられた文章は短く、絵が多くを語る作品です。作者のノリタケ・ユキコさんは、パリを拠点に活動する若きアーティスト。細かく描きこまれたおしゃれで美しい絵は、いつまでも眺めていたくなります。対照的なふたりの暮らしを見比べながら、自分だったらどんな暮らしをしたいだろう?と想像するのもいいですね。大人にとっても、普段の暮らしを見つめ直すいいきっかけになりそうです。
(出合聡美 絵本ナビライター)
カヤックに乗って島に上陸した二人の少年。やがて二人は、理想の家づくりを始めます。ひとりは、森と調和した家を。もうひとりは森を開発し、都会的な家を。そして1年後・・・。
パリで活躍する注目の若き日本人アーティスト、ノリタケ・ユキコが描くふしぎな絵本。
文章は短いのですが、見開きでくりひろげられていく物語。きれいな絵が物語っていて、すみずみまで見入ってしまいました。「じっと見て、感じて、考えて」と表紙の裏に書かれていた言葉。なるほど。作者の強い思いがストレートに伝わってくる内容でした。考えさせられます。 (あんじゅじゅさん 50代・その他の方 )
|