ネルソンは、看護師の母さんと妹のアシュリーと3人暮らし。父さんが家を出ていった一年前から「フードバンク」を利用しています。母さんの給料では食べ物や必需品を買うお金が足りない「ぎりぎりの月」に、引換券と交換に無料で食べ物をもらえる、世界で一番いい銀行です。 子どもたちに朝ごはんを提供してくれる学校運営の「朝食クラブ」にも通うネルソン。ある日、同じクラブのメンバーから気になる話を耳にします。フードバンクの食べ物が、何者かに盗まれているらしい−−。確かに、今月もらえた食料はいつもよりもずっと少なく途方に暮れていたネルソンたち。お腹を空かせて泣く妹のため、平気そうに振る舞いながら心を痛める母さんのため、フードバンクどろぼうを捕まえる! ネルソンは親友のクリシュとハリエットと共に、作戦を立てるのですが……。
物語の軸となっているのは、フードバンクや朝食クラブに通う子どもたち。それでも、重苦しさはありません。いつもお腹を空かせていることをひた隠しにするネルソンに対して、気にかけて何かと食べ物を分けようとするクリシュとハリエット。うらやみやみじめさ、友だちを助けたいという思い、それぞれが本音をぶつけ合うことでお互いへの理解を深め、結束を強くします。そして子どもだけでどろぼうを捕まえるという難題に正面から立ち向かう勇気。真っ直ぐで痛快な彼らに共感し、応援せずにはいられないのです。
作品のベースとなったのは、イギリスのプロサッカー選手、マーカス・ラシュフォードさんの食の貧困に対する取り組みだそうです。フードバンク活動が社会に浸透しているイギリスに対し、日本ではまだその規模が小さく、解決しなくてはいけない課題も多い現状が。巻末では日本における食の貧困の問題、それに対して私たち一人ひとりができることについて解説されています。 ネルソンの視点で描かれるフードバンクとそこにまつわる人々の姿を通して、社会の中で人々が支え合うしくみと大切さについて知り、考えるきっかけにもなる一冊です。
(竹原雅子 絵本ナビライター)
おなかをすかせた人たちを救ってきたフードバンク(食べ物銀行)。そんな世界でいちばんすばらしい銀行が、悪いやつらにねらわれているらしい。ネルソンたちは、子ども探偵となってひそかに調査をはじめるが…。
もう少し、親切な構成だったら良かったのに。
フードバンク、という用語も大人は何となく知っていても、実際に身近ではないので物語が始まる前に、子供が分かるように解説を入れた方がいい。
朝給食を取り入れている学校って、身近に見たことがないけれど、どれくらいの学校が実施しているのだろう?
スーパーで購入品を寄付する、という方法は斬新だと思いました。 (だっこらっこさん 40代・ママ 女の子8歳)
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