2年2か月の歳月、3万7千キロもの距離を泳いで海を渡ったアカウミガメ・ヨシ。その名は日本の名前です。なぜ日本の名がついたのか。果てしない距離をどう泳ぎ切ったのか。実在する一匹のウミガメの軌跡を追ったおはなしですーー。
オーストラリアの浜辺。たくさんのきょうだいとともに一匹の赤ちゃんガメが、外敵の狙いをくぐり抜け海に出ました。必死に身を守りながら潮の流れに乗ってひとりぼっちでインド洋へ。しかし5年後、たどり着いた南アフリカの先端で沖合の漁網に引っかかってしまいます。 「もう大丈夫」 衰弱したウミガメを救ったのは、日本漁船の漁師。深い傷を手当し、数ヶ月にわたる世話のおかげで元気になったウミガメは「ヨシ(良し)」と名付けられました。帰国する漁師にかわりヨシを預かることになったのは、南アフリカ・ケープタウンにある水族館。野生に戻れるのかを心配されたヨシは、その後20年間を水そうの中で過ごすのです……。
生まれてから親ガメになるのは、1,000匹のうちたったの数匹。ヨシとの出会いは、漁師や水族館の人たちにとって奇跡のようなできごとでした。そしてもう一度野生に戻り、故郷の海へ。たくさんの支えと応援に応えるかのように、ヨシは人知を超えた生命の神秘を見せてくれます。
作者のリン・コックスは、アフリカ喜望峰周辺の荒海を泳ぐなど常人の限界を超えた記録の数々を打ちたてた長距離スイマー。ウミガメの保護区で赤ちゃんガメが浜辺から海へと向かう姿を見守った時、その決意と力強さに心打たれたといいます。一匹のウミガメの壮大な物語には、想像を超える困難と孤独に立ち向かい動物史上最長記録を泳いだヨシへの、理解者のようなまなざしも込められています。
100年を生きるといわれるウミガメ、ヨシは今も、広大な海をのびのびと泳いでいるでしょうか。その姿に心を重ねながら、ウミガメが生きる環境保護へも思いをつないでいきたい一冊です。
(竹原雅子 絵本ナビライター)
ヨシ…日本の名前をもつアカウミガメ。自然の力に導かれ、南アフリカのケープタウンから、オーストラリアの生まれ故郷の浜辺まで2年2ヶ月をかけて3万7千キロを泳いだ驚異のウミガメの物語。
感動的な絵本です。
卵から孵った海ガメのの親になる確率は、1%に満たないと言います。
それほどに過酷な生存競争なのでしょう。
絡まった網を引きずりながら泳いでいたヨシを、日本の漁船が救出してことが奇跡であり、運命だったのでしょう。
ここからが実話になるのですが、ヨシの幸運は素晴らしいものです。
助けられ、治療されたヨシは、20年間南アフリカの水族館で過ごすことになります。
人に護られて成長を遂げたのです。
代わりに海ガメの帰巣本能を失ったのかと思ったら、そうではないことにさらに驚きました。
再び海に戻されたヨシは、長い距離を泳いでオーストリアの浜辺に帰って来たのです。
素晴らしい幸運に恵まれたヨシは、これから親ガメとして、ゆうゆうと過ごして行くのでしょう。
長命の海ガメに元気をもらったような気がします。 (ヒラP21さん 70代以上・その他の方 )
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