宇宙船でたどり着いたぼくらがやってきたのは、ここ。乗れたのは、ぼくら二人とおかあさんと大好きなキングだけ。
知らない街での新しい暮らし。お隣さんは変わっているし、学校でもわからないことが多いし、色々言われることもあるけど。
「ぼくらはかんぺき。ぼくらにできないことなんてない」
遠いところにいるおとうさんのことを考えてしまうこともある。でも、大丈夫。いつかここに来られた時のために、ぼくらが準備してるから。
詩のような文章と、独特な色遣いの静かな絵の組み合わせ。シュールな雰囲気でありながら、どこかユーモラスで味わい深くもあり。そんな不思議な存在感を放つこの絵本が描いているのは、主人公の男の子二人が見知らぬ土地で奮闘する様子。少し切なくておかしな日常は、彼らの言葉の通りに受け取れば宇宙人ということになるけれど、彼らの本当のことを知る手がかりは、絵のすみずみや文章の端々にちりばめられています。
子どもたちを取り巻く状況を思うと心をしめつけられそうにもなるけれど、同時に、前だけを向き続け「できないことはない」と言い切れる子どもたちの強さに、教えられることもあるのです。
アストリッド・リンドグレーン記念文学賞受賞、スウェーデンの絵本作家エーヴァ・リンドストロムによる、子どもの視点で描かれた希望の絵本。読むたびに発見のある、忘れられない魅力のある一冊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
宇宙船にのってやってきたぼくら。いっしょに乗れたのは、ママと大好きな犬のキングだけ。パパはここにいない。遠いところで、パパはどうしてるのかな・・・・・・。家族とはなればなれになってしまった2人の、少し切なくておかしな日常。自分を信じる勇気をくれる、アストリッド・リンドグレーン記念文学賞作家が描く希望の絵本。
■推薦の言葉 ぼくが今、あこがれる作家がいるとしたら、まちがいなくエーヴァ! 今とこれからをきちんと描いているから。 エ−ヴァの絵にはいたずらなこどもの目線と落ちつきはらった色の配置があって、一見、静かだけど、こどもが放つそのもののエネルギーを感じるんです。 ──荒井良二 宇宙船でやってきたふたりは「ぼくらはかんぺき、それしかない」「ぼくらにできないことなんてない」ときっぱり言います。元気にそう思えるとき、そんな気持ちになれないとき、そう思わなければ前を向けないとき。だれもがそんな瞬間を毎日くりかえしながら生きていることを、まっすぐに見つめてえがいた物語のような気がしています。ぼくらのことを知る手がかりも、絵の中にちりばめられています。読むたびに新しい発見があるかもしれません。 ――よこのなな(訳者)
|