
休みの日には、大好きなじいじとばあばの家に、よく遊びに来るよ。ばあばは、優しくて料理が得意。じいじは、おしゃべりが得意。そして顔には小さな頃にけがをした傷がのこっている。「傷あとみたいなものは、誰にでもあるんじゃないかな」とじいじは言う。
ある日、じいじとわたしがエッフェル塔に上るために出かけると、昔お医者さんだったじいじは、みんなそれぞれに、その体だったこその思い出があるのだと話しはじめます。
腰がまがっているハキムさんは、フランスで一番のタイル職人だということ。長い手袋をして電車に乗っているマリリンさんの、嫌なことがあるとかゆくなる体のこと。太っていても、じろじろ見られても、気にしないレベッカさんのこと。がりがりにやせたアントワーヌさんのこと……。
現役医師でもあるフランスの作家による、他者にも自分にも優しくなれるメッセージが込められた素敵な物語。じいじは女の子に伝えます。「誰もが生まれてからの“体の物語”を持っている」ということを。
わかっていても、自分のこと、自分の体のことを好きになれない子だっているかもしれない。誰かと体の話をするのは難しいと感じる人も多いでしょう。ついついまわりの目だって気になってしまう。
「自分らしく生きることにこだわらなくてもいい。だれに何と言われても、自分の人生の主人公は自分だということを忘れないで」
作者からの優しく力強いメッセージが心にしみ入ります。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)

みんな誰かと違う、そして美しい
現役医師でもあるフランスの作家による、他者にも自分にも優しくなれるメッセージ
じいじは、お医者さんでした。 顔には、小さいころにけがをした傷が残っています。 「傷跡みたいなもんは、誰にでもあるんじゃないかな」とじいじは言います。 そして、街へ出ると、みんなが持っている体や心の傷について話をしてくれました。
この傷があったからこそ経験できたこともたくさんあるよ。
起きたことは変えられない。今何をすれば自分が幸せなのかを考えることが大事なんだ。
じいじは女の子に伝えます。 誰もが生まれてからの“体の物語”を持っている。 そのどんな物語も、幸せな終わりに変えられるのだと。
担当編集者より 「違いを認め合おう!」と各方面で目にする昨今ですが、子どもたちを取り巻く環境は「見た目の違い」において不寛容になっているようにも感じます。この作品は、誰かの背景を想像する力、いびつな部分もひっくるめて自己を受容する力、その大切さを伝えてくれます。
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