だんまりうさぎは働きもの。でも、なにもしゃべりません。 ある日、だんまりうさぎのところへ、おしゃべりうさぎがやってきました。
絶版になっていて読めなかった安房さんの本が増刷や復刊されて購入できるようになってきましたが、この本もそんな一冊です。
うきざが主人公という親近感がわく内容、大きめの字ということで、絵本から児童書に移行期のお子さんにぴったりだと思います。
題名の通り、誰とも話さずに過ごしているだんまりうさぎのところへやって来たおしゃべりうさぎ。
野菜とおもちを交換して以来二人の交流が始まります。
働き者のだんまりうさぎ、働き者というだけでなく、長い耳は星の声も聞けるのです。
安房さんの作品の多くに、耳をこらせば聞こえる音、目をこらせば見える風景というものがあります。
星の声というのはとても安房さんらしいと思いました。
だんまりうさぎもおしゃべりうさぎもお互いにマイペースでありながら、心を寄せあっていく過程が温かく描かれていると思いました。
息子が笑っていたのは、おしゃべりうさぎが大根を抜いて尻もちをつき、それをだんまりうさぎが真似している場面です。
二人の仲の良さが垣間見えました。
そして、安房さんの作品にはおいしいものがたくさん出てきますが、この作品にも食べる場面が出てきてそのどれもがおいしそうでした。
おいしいものだけでなく、時にはロマンチックな場面もあり、さすがだと思いました。
私は安房さんの短編を多く読んできたので、切ないはかない怖いのが安房さんの世界だと思っていたのですが、中編作品にはこの作品や「すずめのおくりもの」などのように、心温まり小さな子どもでも読める作品もあることを知りました。
とてもきれいな日本語で読みやすくそして語りやすい作品です。幼年童話への入口としてもお勧めです。 (はなびやさん 40代・ママ 男の子7歳)
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