『王への手紙』上巻で、瀕死の騎士に手紙を託され、隣国の王へそれを密かに届けるため、たった1人で隣国をめざす16歳の見習い騎士、ティウリ。敵に追われながら何とかたどりついた隠者の住まいで、山の少年ピアックに出会います。 山をよく知るピアックのおかげでティウリは国境を越えますが、下巻では、山を下りてすぐの都市で市長に捕まりそうになります。山越えの間にティウリの心からの友人となったピアックは、手紙とティウリを守るため、一計を案じて代わりに捕まります。ティウリは都市の人たちに助けを求めますが……?
オランダの作家トンケ・ドラフトによる、手に汗握る冒険小説。ティウリが負った任務は、二つの国の未来を左右する重大なものであり、それを知る執念深いスパイに命を狙われつづけます。王の元へたどり着くまで、分厚い壁に囲まれた都市や、大きな川にかかる橋の関所があります。ぞっとするような出来事が起こり、ついにはスパイと対決する場面がやってきます。 しかし本書の本当のみどころは、剣の闘い以外のところにあります。それは、敵に追われるティウリの旅が、世界を知り友人を得る旅となっていることです。
『王への手紙』初版が出版されたのは1962年。翌年にオランダで子どもの本の賞(「金の石筆賞」の前身)を受賞。それ以来、この物語がオランダの書店の児童書コーナーに見られなかったことはなく、愛され続けています。
手紙を託された旅をとおしてティウリが得たものは、何だったのでしょうか。任務が終わろうとするとき、何を思うのでしょうか。読者は「きみだったらどうしただろう?」といつも心で問いかけられているように思います。終盤で描かれるティウリの思慮と決意はすがすがしく、“児童文学の名作”と呼ばれるにふさわしいものです。 『王への手紙』は、『白い盾の少年騎士』上下巻へ続いていきます。物語を読み終え、ティウリと一緒にもっと旅を続けたくなったら、続編にも手をのばしてみてください。新しい物語にまた出会えるはずです。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
騎士になるための最後の試練の夜に,思いがけず重大な使命を与えられた少年ティウリは,隣国へと旅立つ.謎めいた隠者,陰険なスパイ……手に汗にぎる,オランダの人気冒険小説.下巻
いよいよ下巻です。
下巻の主な内容は、“みどころ”で、大和田佳世さんが書かれているので、ぜひ読んでください。
この本に出合って、やっぱり、岩波少年文庫シリーズは本当に素晴らしい児童書を出されている出版社だなぁを、改めて思いました。
久しぶりに一気に下巻まで読んでしまいました。
日本という国は漫画やゲーム作品がとても優れていて、それこそ子どもたちは選びたい放題ですが、そういう時代と国であっても敢えて、私は子どものうちにこの作品に出会ってほしいと思います。
この物語の冒険は、もちろん面白いのですが、ストーリーだけでなく、この作品で人と人との出会い、友情や信頼、時には悪意であったりするものを主人公ティウリと一緒に感じてほしいです。
そして、ティウリやピアックのように、素直に友だち(仲間)を思いやれる子どもたちがたくさん育ってほしいと思います。 (てんぐざるさん 50代・ママ 女の子23歳、女の子19歳)
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