人間と自然との関わりに目が向く環境絵本。 乱獲や、人が持ち込んだ動物によって絶滅したと思われていたガラパゴス諸島・ピンタ島のゾウガメ。 テレビ等でも話題の、その中でたった一頭で生き残っていた「ひとりぼっちのジョージ」の物語。「地球最後の楽園」といわれたガラパゴスで生き、保護され、 いつか本当の自然を取り戻したいという思いをジョージの立場から語ります。
Lonesome George(ひとりぼっちのジョージ)っていうフレーズを耳にしたかたは多いのではないでしょうか?
イギリスBBCが2006年に制作した番組で、これまで自然の素晴らしさだけが取り上げられてきたガラパゴス島ですが、ピンタ島ゾウガメの生き残りのジョージに迫害の歴史があることや、その保全活動には多くの問題があることを浮き彫りにしています。
それが、NHKでも放映されて、大きな反響を呼んだのは、記憶に新しいところです。
その放送内容は、2006年にイギリスで発刊された「Lonesome George: The Life and Loves of a Conservation Icon」(日本語訳「ひとりぼっちのジョージ 最後のガラパゴスゾウガメからの伝言」ヘンリー・ニコルズ著にも詳しく描かれています。
この作品は、そのジョージの物語を日本の絵本作家 ペンギンパンダさんが描いたもの。
しかも、この絵本の収益金の一部が、現地のチャールズ・ダーウィン財団の活動資金として寄付されるというのですから、とても価値のある作品と言えると思います。
主人公は、ガラパゴスゾウガメ。
それもピンタ島というところに生息するピンタゾウガメという亜種。
現在、確認されているピンタゾウガメは、たった一頭です。
それが、ロンサム・ジョージ(Lonesome George)「孤独なジョージ」という訳です。
乱獲により、奇跡的に発見されたのですが、ジョージは、30年以上前から独りぼっちなのです。
最初は虐待の歴史が綴られているのですが、ジョージ1匹になってから、その視点で物語は進行します。
1人でいることは寂しくないという視点が、実に微笑ましいもの。
ことりのフィンチ、フラミンゴ、ウミイグアナ、アホウドリと言った友達との交流を楽しく描いています。
それからは、人間に保護されてからの物語が続きます。
最後は、チャールズ・ダーウィン研究所のピンタゾウガメを繁殖させたいという夢で終わるのですが、その夢に拍手をおくりたいと誰しもが思うことでしょう。
巻末には、ガラパゴスゾウガメの説明やガラパゴス諸島の生物の写真もあり、大人も楽しめる作品となっています。
「地球全ての生き物の命は、貴重で平等である。
力ある人間が、弱い生き物を、絶滅に追いやることは、あってはならない。
そんな思いやりを持つ人間を、沢山育みたい」
と著者はあとがきに書いていますが、実に崇高な思いであって、共感せずにいられないことだと思います。
環境問題を考える意味でも、貴重な絵本であり、多くの世代の方にオススメします。 (ジュンイチさん 40代・パパ 男の子12歳、男の子6歳)
|