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大人になっていく少女たちをみずみずしく描く 「最後の場面のあまりのうつくしさに言葉をうしなった。私たちは覚えている、子どもからゆっくりと大人になっていく、あのちっともうつくしくない、でも忘れがたい、金色の時間のことを。」角田光代 基地の町にすむ小学6年生の楓と中学1年生の紀理。自分をとりまく世界に一歩ずつふみだしていく少女たちをみずみずしく描いた児童文学。
沖縄の基地がある街に住む女の子の話。何かの事件や、話の盛り上がりがあるわけでなく、女の子の日常や思いが、ただ淡々と描かれていく。「基地のある街に住む」とはどういうことなのか、今ひとつピンとこない想像力に乏しい私だが、この本を読むことで、ひととき、基地の街に身をおいて、ほんの少しだけ感じることができた。
押し付けがましくなく「一人の市民」の生き方、大事なことを伝えてくれる本。声高ではなく静かに、「戦争のない平和な世界の大切さ」「平和が大切だと表明することの必要」を伝えている本。
「・・・なにか特別な贈り物を受けとったような、ふしぎな気持になった。(中略) ただそっと、わたされたように思った。」という一文が最後にあるが、私もこの本から、大事なものをそっと手渡された気分になった。こういう本を、子どものための「文学」というのだと思う。ぜひ、これからの時代を担っていく若い人に読んで貰いたい。
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どんどん読み進めていくタイプの本ではないので、みんなにぜひ!というのは難しい気もしますが、私的にはとても良かったので、★を5つ付けました。 (なみ@えほんさん 50代・ママ )
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