舞台は、ナマケモノのいる森。 木はすくすくと育ち、葉っぱは活き活きとしげり、鳥も、ヒョウも、アリクイも、ヒトも、そしてナマケモノも、 その森の中で生きていました。
森の木が立ち並ぶ場面。どの角度から見ても、木が重なり合って立っているのが見え、 じっとよく見ると動物たちやヒトがいるのが見えます。 実に美しい光景です。
ところがある日、森に冷たい機械の音が響きます。 「シャーン シャーン!ギューン ギューン!」 冷たい機械の鋭い刃が、森の木を切り倒していきます。 あっという間に木が次々と切り倒され・・・鳥たちが、動物たちが逃げていきます。
ページをめくるたびに・・・ナマケモノのいる中央の木から遠い、森の外側から木が切り倒されていきます。 どんどん、どんどん、森の木がなくなっていく様子が、しかけでとてもうまく表現されいて・・・ そして、とうとう・・・、森はなくなってしまうのです。
ページをめくっていくことで、ひしひしと感じる「喪失感」と「悲しみ」。 この絵本がポップアップである意味が、ここにあります。 悲しい気分を味わった後にたどりつく、木の枝が落ちているだけの真っ白なページ。
ひとりのヒトの登場で、小さな、それでいてインパクトのある変化が起こります。
しかけを引くことで、小さな木の芽が一斉に立ち上がるシーン。 この「紙をひっぱる」という、ただそれだけの行為に、こんなに充実した気持ちを味わうことができるのだ、という驚きがあります。
あ、ナマケモノもいますよ!
そしていよいよ、最終ページのクライマックス。このページは実に素晴らしくてお見せしたいのですが・・・ ここはみなさんが実際に手にとって開いてみてください。 しかけ絵本と言えばロバート・サブダのド迫力な飛び出す絵本が有名ですが、 この作品は派手さではなく、物語に沿って緻密に考えられた美しいしかけが魅力です。
そしてフランスの作品らしく、深いメッセージが込められています。 読者である私たちは、ページをめくりながら読み進めていくことで、このメッセージを感じることができます。
家に置いて、インテリアとして楽しめ、遊びに来てくれた友人に見せたくなる作品です。 そしてもちろん、ギフトとして贈ることで喜ばれ、センスの良さを感じてもらえることでしょう。 普通は日本語版よりも原書の方が素敵なものですが、 原書の雰囲気を活かしたフォントやデザインが実に素敵にできあがっています。
(今のところ)2012年のイチオシ作品、自信を持って皆さんにご紹介します。
(金柿秀幸 絵本ナビ事務局長)
ナマケモノのいる森ってどんな森? さがしてみて、葉っぱのあいだや木の根もと。その木の上のこずえまで。森のあちこちすみずみまで。 ある日ひびいたするどい音……。森でなにが起こったのでしょう?
ページをめくるたびに動物や植物の息づかいが聴こえてくる。 360度広がる森の中で発見するよろこびや驚き。 フランスで誕生した、こどもから大人までたのしめる絵本。世界9カ国で翻訳。
ヒトは森を、守ることも、こわすことも、育てることも、できます。 この本が、一粒の種へ、一本の木の成長へ、自然とともに生きていける幸せな未来へ、つながりますように。―訳者・松田素子―
ナマケモノはどこにいるのかな、、、。本を目の高さにしてみたり、いろいろな角度から見たりしました。
森の木が切り倒されていくと、ナマケモノが見えてくるのが、悲しかったです。
しかけが、お話とぴったりあっています。もし、しかけなしの普通の絵本だったら、こんなにしみじみしないだろうなと思いました。
ヒトは木を倒すことはできても、作ることはできません。木を植えても、育つのは木の力です。動物たちのすみかの森を大事にしなければ、と思いました (どくだみ茶さん 40代・ママ 女の子11歳)
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