人間の王子様を好きになってしまった人魚姫。嵐で遭難した王子を助けた姫は、声とひきかえに足を手に入れ、ついに人間として王子様のそばへ行く願いがかなうのです。ところが、声のない姫は王子を助けたことも好きなことも伝えられません。とうとう王子様は、勘違いをしたまま他の人と結婚をすることになってしまい・・・。 アンデルセンの永遠の名作「にんぎょひめ」。子どもの頃に読めば少し怖くもあり、大人になってから読めば切なさに心を震わされてしまうこの物語。多くの作家の創作欲を掻き立てられるのでしょう、数々の絵本が発表されています。同じお話でも、それぞれの雰囲気や解釈、表現を味わえるのも名作絵本の楽しみ方の大きな一つでしょう。
その「にんぎょひめ」が、小さな子どもたちから大人まで絶大なる人気を誇る絵本作家いもとようこさんによって手がけられました。 「大人になっても忘れたくない いもとようこ世界名作絵本」シリーズの新作です。 原作の持つ悲しさや切なさといった感情はそのままに、わかりやすくシンプルに語られる文章は子どもたちの心の中にも自然とストーリーが入り込んでいくのではないでしょうか。更に美しい海と地上で繰り広げられる悲しい出来事などが、いもとさんならではの優しい色使いで描かれています。 そして、なんといっても人魚姫のまだ小さくて可憐でひたむきな表情、一大決心をして王子のもとへ向かい自らの運命を自らで決めた時の佇まいなどの表現。人魚姫自らは何も語らなくとも、愛することの喜びや切なさ、そして悲しみを全編から感じ取ることができます。 子どもたちの心にいつまでも残る物語として、じっくりと人魚姫を味わうにはぴったりの1冊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
人間の王子様をすきになった人魚姫。嵐で遭難した王子を助けた姫は声とひきかえに足を手に 入れますが、王子を助けたことも好きなことも伝えられません。王子の命とひきかえに人魚に 戻ることもできましたが、姫は愛する喜びとともに海の泡と消えていくのでした。
人魚姫は叶わぬ恋を追い求める人魚の物語です。しかし子供向けにアレンジしてしまったら、心のひだの深みまでは描くことは難しいでしょう。
この絵本は、「おとなになっても忘れたくない絵本シリーズ」としていもとさんが手がけているシリーズの1冊だとすれば。
残念ながらその領域に達していまぜん。
いもとさんの絵本は、可愛すぎるのです。 (ヒラP21さん 60代・その他の方 )
|