原爆投下後のヒロシマ。新聞のかわりにニュースを伝えて歩く「口伝隊」の少年たちがいた――。
1945年8月6日朝、米軍機が投下した原爆によって広島は壊滅した。広島の比治山のふもとに住む国民学校6年生の英彦、正夫、勝利の少年3人はかろうじて生き残ったものの、そろって家族を失った。3人は、新聞を発行できなくなった中国新聞社が急きょ組織した口伝隊に雇われ、ニュースを口頭で市民たちに伝える。 しかしニュースの内容を知って、少年たちは大人たちの変節ぶりに激しい怒りをおぼえる。また、アメリカが原爆の「効果」の調査団を送りこんでいると聞いて、英彦の頭の中はくやしさで煮えたぎる。 9月になると、巨大台風、さらに山津波と高潮が広島を襲い、勝利は水害で命を落とす。正夫も原爆症で死去。15年後、英彦も原爆症のため、20代の若さで世を去る。
「戦争」「災害」「放射能」の中で、懸命に生きようとした少年たちを描いた井上ひさしの朗読劇を、印象的なイラストとともに単行本化。
原爆投下を目のあたりにした3人の少年が語る物語です。
8月6日に様変りした広島で、少年口伝隊という広報活動の任務を与えられた彼らは、新聞報道の代行として、情報を伝え歩きます。
広島が「ヒロシマ」に変わった破壊力と、追い打ちをかけるように広島を襲った巨大台風の中で、懸命に生きた3人の少年の生きざまが、まぶしいばかりに描かれています。
自分の家族を失い、世の中の地獄を目にしながら、なんとも少年の生き方は素晴らしいと思いました。
でも、原爆症で2人が亡くなり、残った少年も原爆症がもとで15年後に死亡。
救いようにない哀しみが、読後にわいてきました。 (ヒラP21さん 60代・パパ )
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