誰もが「昔、絵本で読んだことがある」「読んだことないけど、あらすじは知ってる」という、定番のお話があります。アンデルセンの『おやゆびひめ』も、そんなお話ではないでしょうか。 幼い時、手にした絵本というのはページをめくる感触も含め、すみずみまで覚えているもの。定番の物語こそ、手元におく本は、自分にしっくりくる文章や絵にこだわって選ぶ、というのも大切なのかもしれません。
世界中で愛されつづけているアンデルセンのお話に、美しく繊細な画風で知られるツヴェルガーが絵をつけた絵本が、作家の江國香織さんによる新訳で復刻されました。完訳版ということで、大人になってから初めて『おやゆびひめ』を読み返してみました。
赤ちゃんがほしいと願っていた女の人が、魔女からもらった麦粒を植木鉢に埋めると、チューリップそっくりのお花のつぼみがつきます。赤と黄色の花のつぼみは、女の人がキスをするとふんわりと開きました。 そして、その中には、大人のおやゆびくらいの、小さくてかわいらしい女の子がちょこんと座っていたのです……。
細部まで魅力的なお話だと改めて思いました。くるみの殻のゆりかごに、スミレの花びらをしきつめ、ばらの花びらのかけふとん、スイレンの葉と白いちょうちょをリボンで結んだ舟など。 みずみずしい緑や花や水にあふれる世界から、そのすべてを遮断された世界へ。運命に翻弄されつづけるおやゆびひめの物悲しさと孤独感に、秘めやかな陰をもつツヴェルガーの絵がしっとりとなじんでいます。扉ページの幸せな線画もしみじみ素敵で、大人も一緒になって堪能できるぜいたくな一冊です。
(光森優子 編集者・ライター)
童話作家・アンデルセンの代表作を、国際的にも評価の高い絵本画家ツヴェルガーが独特の繊細な絵で描きました。約30年前のツヴェルガー初期の作品(日本語版は1978年 かど創房より出版)の復刊です。小さな花から生まれた、小さなおやゆびひめ。ヒキガエルにさらわれ、さまざまな苦難にあいながら、野ネズミのもとに身をよせます。そこでひん死のツバメを助けますが……今なお世界中で読みつがれている名作を、江國香織の完訳版でお届けします。
魔女からもらった種を植え、その花から生まれた小さな女の子、おやゆびひめの物語。
同じおやゆびひめのお話は、いわさきちひろさんの絵で読んだことがありますが、ツヴェルガーの絵も、大人っぽくて素敵でした。
特に、繊細に描かれた動物たちが魅力的です。
江國香織さんの訳も、美しくて雰囲気がありました。 (クッチーナママさん 40代・ママ 女の子16歳、女の子13歳、男の子11歳)
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