小学5年生の男の子が、燕岳(つばくろだけ)から槍ヶ岳(やりがたけ)という北アルプス一番人気のルートを2泊3日で歩く絵本です。 ある夏の日の早朝、ぼくはとうさんに連れられて自宅を出、特急電車とバスを乗り継ぎ、登山口へむかいます。 初日は燕岳登山。山頂近くの山小屋に宿泊。翌朝、雲海にのぼるご来光を見て出発。槍ヶ岳山頂をめざすのです。 見晴らしのいい尾根道から、クサリ場の難所へ。急に雨も降り、だんだん厳しくなる天候と上りに、ぼくは内心半泣きで山頂をめざしますが・・・。
じつはこれ、落語絵本などで大人気の川端誠さんの作品なのです! 雰囲気が違うので驚きますが、太陽の光線とともにうつりかわる雄大な山々の色や立体感、美しさを描くために、今回の絵を選んだにちがいない!と納得させられます。 個人的にはお弁当がおいしそうなこと、克明な登山時間、大天井(おてんしょ)ヒュッテや水俣乗越(みなまたのっこし)などの「山の言葉」に思わずときめいてしまいます。 この絵本、川端誠さんの息子さんたちがそれぞれ10歳のとき、いっしょに槍ヶ岳にのぼったときの取材をもとに描きあげたそうですから、お弁当の中身や時間も実話に近いのかもしれませんね。
中空に槍がつきでたような、独特のかたちをもつ山、槍ヶ岳。 標高3,180メートル、日本で5番目に高い山である槍ヶ岳は、しっかり事前準備をしないと、おいそれとはのぼれない山です。 でももしのぼったら、こんな道と風景が広がっているのだと教えてくれる絵本がはじめて誕生しました。
文字は総ルビ。山登り独特の表現はありますが、テンポよいリズムで、小学生中・高学年くらいにぴったりでしょう。 前後の見返しには、2泊3日の縦走ルートと、山小屋のスタンプがいっぱい! あこがれの山にのぼりたくなる絵本。そして、山を知らなかったひとも、山を好きになりそうな絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
小学校5年生のぼくは、父さんと北アルプスにやってきた。目指すは槍ヶ岳山頂! 険しい山道、急な下り坂、激しい雨、足元しか見えないような濃いガス……。それらを乗り越えた先には……。何度も取材を重ねて描いた絵と文章は、山の息遣いまでも伝わってくるようです。主人公の「ぼく」が感じた登山の楽しさ、苦しさ、達成感を、子どもたちもきっと感じてくれることでしょう。また、「ぼく」のそばに常に寄りそい、見守るお父さんの存在も見逃せません。日本の山のすばらしさや、少年の感動をぜひ味わってください。
川端さんによると、実際に息子さんと槍ヶ岳に登って、何枚も写真を撮って、それを参考に絵を描かれたとのこと。
だからか、とても臨場感があります。
落語絵本など、多くの川端誠さんのユーモア絵本のタッチとまったく違って、とても写実的な、美しい、そして、迫力のある絵です。 (ピンピンさん 50代・その他の方 )
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