「ユキ、はぐれるなよ。」 「うん、ぜったい ついて いくね。」
そう会話を交わしているのは、これから遠く北極やアラスカの海へと出発するサケのギンジとユキ。数千キロも続くその旅は、私たちの想像をはるかに越えた、過酷な試練の連続なのです。 海は食うか食われるかの連続。サメに追いあげられた海面には海鳥が待っていて、多くの仲間が襲われていきます。夏になると、先を行った群れがアザラシに追われて全滅。冬になれば、突然大きな網に囲まれて捕まってしまった群れもいます。 そんな中でもギンジたちはお互いに信じ、励ましあいながら、必死に前へと進んでいきます。
「どうしてそんなつらい旅をするの?」
たくさんの仲間を失いながらも、ギンジとギンジに必死について行くユキが希望を失わないのは明確な想いがあるからなのです。 「ふるさとでたまごをうみたい」 4年にも渡る回遊の後、一人前になったサケは故郷の川に戻っていきます。 ギンジとユキも、故郷のこぶし川のにおいが近づいてくるにつれ、力がわいてきます。ユキのお腹には新しい命が宿りふくらんできています。ところが、こぶし川の様子が以前と違っていたのです・・・。
全身の力ををふり絞りながら命をつなげていく2ひきのサケ。 そんなサケのひたむきな姿に感動し、まっすぐな愛情を込めて描き出したのは『ねこざかな』や『おれはワニだぜ』他たくさんの人気絵本作品を生み出されている渡辺有一さん。 2011年の大震災の少し前に東北のある川を下って海に出たサケの子どもたちの物語なのだそう。ガレキに埋もれた河口の異変に気がつきながらも、川をのぼりつづけたサケたち。ただ生命をつないでいくことに死力を尽くすのです。その一心な姿は読む者の心を打ち震わせます。
この絵本はギンジとユキの深い愛の物語であり、また繰り返されていく命のつながりについて、立ち止まって深く考えさせてくれる内容でもあります。子どもたちと共に、しっかりと受け止めていきたい1冊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
数千キロの旅をして、ふたたび故郷の川に戻ろうとするサケ。そんなサケの一生に、まっすぐな愛情を込めた絵本ができあがりました。 互いに信じ、支え合いながら旅を続けるギンジとユキ。しかし、ユキのおなかに命の源が宿ったころ、ふたりのふるさとは大きく形を変えていたのです。 「ふるさとでたまごをうみたい」 ユキの想いは叶うのでしょうか。 生命の終わりないつながりを、深く考えさせてくれる1冊です。
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サケの一生を描いた絵本は初めてではないのですが、ここまで大変な思いをしてサケが生まれ故郷に戻ってきて、次の世代を生んで一生を終えることのひたむきさを感じた作品はないと思います。
それも帰ってきた場所が、東日本大震災で津波被害を受けた川だからでしょうか。
ふるさとはひとつなのです。
サケのギンジとユキに勇気と力を伝えられたように思います。
川に戻れなかった多くの仲間たちのためにも、生きること、ふるさとを守ることの大切さを受けとめなければいけないと思います。 (ヒラP21さん 60代・パパ )
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