岡本綺堂「お文の魂」、野村胡堂「「銭形平次」誕生 他」、石ノ森章太郎「おくり火」、都筑道夫「小梅富士」の、4編を収録。
【内容】
・お文の魂(岡本綺堂)
・「銭形平次」誕生 他(野村胡堂)
・おくり火(石ノ森章太郎)(漫画)
・小梅富士(都築道夫)
【感想】
時代物でミステリの短編4つ。最初と最後はミステリ、「銭形平次」は随筆、漫画と間に毛色の違った作品が入り、最後まで飽きずに読み切れる。私はミステリも時代物もほとんど読まないが、これらの短編は非常に読みやすく、文章が美しく、江戸時代の雰囲気が伝わってくるようで、楽しめた。80年代〜90年代ごろ、テレビでよく時代劇をやっていたが、その雰囲気を文章で楽しんでいる感じであった。
当時の時代劇は、だいたいの作品がお決まりのパターンで、勧善懲悪、最後に正義が勝つという単純明快なものが多かった。時々、リアルな人間模様を描いたドロドロした作品もあったと思うが、どういう訳か単純な方が人気があったようで、再放送を重ねていた。子どもだったので、同じパターンの作品ばかりで飽きてしまい、ギャグやパロディを勝手に作って楽しんでいた。
大人になってみて、ハッピーエンドで終わる時代劇というのは、安心感があっていいと思うようになった。面白くはないけど、現実の生活の人間模様が複雑で、単純にはいかないから、テレビや物語のなかでは、せめてスッキリ解決してもらいたいと思うのだ。悪がやっつけられるのを見て留飲を下げる。ストレス解消になるのだ。
この短編集の、特に「おくり火」が、私は好きだ。身分が高い者の傲慢さやいやらしさ、庶民がどうにもならない人生を精一杯生きる健気さが描かれている。現実は傲慢で鼻持ちならないバカがいい思いをし続けていることも多々あるが、この漫画のようにきっと天罰が下るだろうと、希望をもって生き抜きたいと思う。 (渡”邉恵’里’さん 30代・その他の方 )
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