この絵本のことは、末盛千枝子さんの『小さな幸せをひとつひとつ数える』という絵本を巡るエッセイで知りました。
末盛さんのこの本には一冊ごとのエッセイにタイトルがついていて、ゴフスタインがローザ・リー&ドク・ワトソンの歌に絵を描いたこの絵本にはこんなタイトルがついていました。
「別れの悲しみの向こうに」。
そして、エッセイではこの本の出版化を勧めてくれた夫のことやまるでこの絵本の登場人物のようであった両親のことが綴られています。
この絵本はゴフスタインが他人の文章に絵を付けた初めての作品だということです。
登場人物は一人のおばあさん。
おばあさんには「何年も何年も幸せ」に暮らしたパートナーがいました。
けれど、彼は亡くなって、彼女は一人っきりになってしまいます。
絵本の中に何度も出てくる「ああ あなた!」という言葉が、彼女の悲痛をよく表しています。
彼女は一人、部屋にいます。
「私の心はずたずた」と嘆きます。
けれど、こうも思うのです。
「大好きな思い出はなくならない」、そして「私がそっちへ行ったら また手をつないで歩こうね」と。
愛した人との悲しい別れは誰にも訪れます。
逝ってしまった者と残された者と、どちらが悲しいのではなく、一人っきりでの旅が悲しいのです。
できるとしたら、いつまでも想い続けること。
肉体はこちらになくても、思いだけは二人で一緒に歩くこと。
末盛千枝子さんは「いつかはわからないけれど、きっと訪れる愛する人との特別な別れの日のための一冊」と綴っています。