ゾロトウさんの作品は、等身大のこどもたちの心象風景を描いたものが多いように思います。
ハーパーコリンズ(ハーパー・アンド・ブラザーズ)で、あのモーリス・センダックの存在を世に知らしめた編集者アーシュラ・ノードストロムの秘書を経て、編集者そして児童書作家になられた方だそうです。
主人公の男の子の独白です。
男の子には、父さんがいません。
母さんが話してくれた父さんは男らしく立派だ。
もし父さんがいたら、こんな父さんに違いないと語ります。
まさしく、子どもの理想のお父さん像です。
日々の生活で男の子が、どんなにか『父さんがいたら…。』を繰り返し思い描いていたかが、切々と伝わってきました。
こどもはこういうことを求めているのか、と気づかされたこともあります。
両親が揃っているから、良く育つわけではない。
満たされぬおもいや傷ついた経験もまた、子どもを成長させてくれるようにも思われます。
原作では、父さんは戦死していないようです。
とすると、母さんの息子への父さんを語る姿勢が、一層素晴らしく思えてきます。