山奥に棲むカラスの一家に4匹の子どもが生まれた。パン屋を営む夫婦は、毎日子育てと仕事で大忙し。そんな中、子どもたちも商売を手伝うようになり…パン屋繁盛記。
80年代に親類の家で初めて読んだ。子どものころには子ども向けの本の良さがあまりわからなかったが、この本は話の筋よりも、たくさんのパンが出てくる場面や、カラスの一羽一羽が個性豊かに描かれているところに非常に魅力を感じた。テレビパンとか、かみなりパンとか、変な形のパンはどういう具が入っているのだろう?サボテンパンはサボテンの実や葉が入っているのかしら?などと、1つ1つの成り立ちや作り方、味、物語などを想像して楽しんでいた。
大人になって、中年になって、白髪が生えてからまた読んだ。
やはり面白い。今度はしっかり話の筋も楽しく、やはり絵も魅力的だった。かこさとしという作者についても興味が沸いたし、後書きにある制作秘話も素敵だった。
この絵本は、どの年齢の人がどのように読んでも面白く感じるように作られているのだと思った。いたるところに読者を楽しませる工夫があり、一つ一つの絵に物語が含まれている。
後書きにあった筆者の狙いがしっかり反映され、効果が表れているのだと実感した。
ロングセラーなのも十分うなずける。
これから時代も社会もどんどん変わっていくが、この手作りで愛情たっぷりの絵本はずっと残ってみんなを楽しませていくだろう。パソコンなどを使った絵では出せない地味深い味わい、温かさがある。