被差別部落出身の中村由一さんから発せられた、生々しい実体験に心震えました。
長崎原爆を被災して、生き残ることができた少年についたあだ名が、何とも言えません。
脱毛した頭を「ハゲ」と呼ばれ、頭髪が生えてきたら「カッパ」と呼ばれ、次には「ゲンバク」と呼ばれたのです。
しかも、担任の教員が自ら中村さんをそう呼んでいた事をおぞましいとまで感じました。
小学校の卒業式にだけ、保護者や来賓を意識して、聞き慣れない本名を呼ばれた事をどのように考えれば良いでしょうか。
同級生に卒業証書を破かれようとしたことを、どう考えれば良いでしょうか。
中村さんが被差別部落出身だったと語られた時に、多くの疑問が妙に連鎖しました。
靴職人が、被差別者の職業であったなどとは推測できなかったのです。
私は小学校低学年の時に長崎の佐世保で暮らした事があり、住んでいた側の河の対岸に被差別部落があったことを妙に覚えています。
閉鎖的な別社会で、差別され蔑まされた人たちが隔離的に生きていた事を、今更ながら重く受け止めました。
ちょっとしたきっかけで辿り着いた本ですが、当事者の肉声の重さを感じ、自分の中にもある差別意識をとても恥ずかしく感じました。
児童書として、子どもたちに伝えながら、大人も内省しなければいけないことを痛感します。