八木さんの絵本はメインストーリーの内容より、その作品に散りばめてある世界観が素敵だな〜と、思います。
特に、昭和生まれの人間には!
たとえば、ホラ。中表紙の絵をよく見てみてください。
お母さんの使っている掃除機も、部屋の隅にちょこんとおいてある扇風機もふすまの模様や奥に置いてあるタンスの形。縁側に下駄にバケツ。
どれをとっても、昭和40年代から50年代の昭和の日本のおうちによく見られる家具や備品ではありませんか。
そこへ突然現れる、人間の言葉をしゃべる少々大きめのもぐら!
このものすごく現実的な空間に、ものすごく不可思議なものが普通に現れるギャップが面白いですね〜。
しかも、“もぐたん”に出会った家族はビックリしているものの、物語の流れ的に変な違和感を感じさせないんですよ。
この家族が“もぐたん”の力で小さくなった時、呪いの踊りで目が回ったのかキョトンとした顔で人形のように固くなって、一瞬止まっちゃってたシーンが、私は好きです。
キツネにつままれたような短い夏の夢が見たくなったら、この絵本を読んでみてください。
幼稚園・保育園や学校で読み聞かせに使うのもいいですが、家族のお話なので、おうちでお父さんやお母さんが寝物語に読んであげるのが一番物語の中に入り込めそうな気がします。