【内容】
尊敬するおじいさんがもっと幸せになり長生きするように、かたつむりを食べてもらおうと思ったお屋敷の主は、部下の太郎冠者になるべく大きなかたつむりをとってくるように命令する。かたつむりを知らない太郎冠者は、「藪に住み、頭が黒く、腰に貝をつけて、時々角を出す。長生きすると人ほどにも大きくなる」という言葉だけを信じて探し求めて歩くと、藪にそれらしき人がいた。その人にお屋敷までついてきてもらおうと声をかけ…だんだん妙な展開になり、収拾がつかなくなっていくシュールなギャグ絵本。
文:内田麟太郎
絵:かつらこ
※狂言の演目「蝸牛」(かぎゅう)を楽しくアレンジした作品です。
【感想】
あまりものを知らなすぎるのも考え物、といういい見本だと思う。
上司も部下の技量を考慮して、仕事を頼んで欲しい。部下もわからないものは、しっかり確認するべきだと、傍から見ていて思う。人間社会の基本的な構造はかわらないのだ。愚かな人はズルい人に騙されたり、バカにされたりする。悲しいことだ
。一生懸命やっているのに、悪い人に騙されている姿が哀れだ。
見どころは、絵。この作品は言葉も手書きのダイナミックな部分と、普通の印刷文字の部分があり、物語の雰囲気を盛り上げ、人物の気持ちを雄弁に物語る。
特に、太郎冠者がかたつむりの説明を聞いて、いろいろに想像を膨らませ、ますますわからくなっていく様子が素晴らしく面白い。
また、随所にかたつむりが登場しているので、それを捜すのも楽しい。本物のかたつむりが目の前にいるのに、全く気が付かない太郎冠者。舞台なら、客席からツッコミを入れたい。そして、アグレッシブに前衛的でありつつも伝統を踏まえたファッション!意欲的に攻めて楽しんでもらおうという心意気が、男前である。
ご期待ください。