短編映画で取りざたされて、絵本を読まぬ人もタイトルは知っている人が多い絵本。
環境問題の絵本だと息子は言った。
だんだん地球が水没していく。
それを極端に表しているとすれば、環境問題の絵本であることはまちがいない。
でも、この絵本は環境破壊を訴えているのではない。
主人公は海に沈んでいく家に愛着を持ち、次々と上に家を積み木のように作り足していく。
ある日大工道具を落としてしまって取りに行くと、次々と自分が昔に住んでいた家が現れてくるのである。
おばあさんが死んだ家、おばあさんと一緒に暮らした家、娘が結婚した家、子どもが生まれた家、そして自分達が子どもだった頃の家。
最初の家は地上にあった。
それが次第に水没していくのである。
これって人生ではないか?
この絵本にはとても深いものを感じる。
自分は生きるために次々と家を作り足していくのである。
そして思い出は水没していく。
新しく作った家にタンポポの花が咲く。
意味深長である。
以前、まわりにあった家の住人は去ってしまった。
おじいさんはどこまで家を作り続けるのだろう。
自分は海の上で一人生活。
読み終えた所で息子が言った。
「おじいさんのいえってどんどん小さくなっていくんだよね」
そうなんだ、つみきのいえって上に行くほどどんどん小さくなるんだよね。
こんな所に自分の人生を重ねてはいけないと思いつつ、おじいさんが決して不幸にみえないのがこの本の究極の良さである。