おとうさんが木になるお話です。
ごっこなのか、比喩なのか、夢の中なのか
最後までよくわかりませんが、
すーくんは木の上でそよそよと風にあたり。
女の子も来て、下に座って気持ちよさそう。
水を十分に含んだ絵筆で描かれた、子どものように素朴な絵、
いつしか自分も過ごしただろう自然の情景が広がります。
すーくん親子を通して見る、
そんな気持ちのいい光景に、爽快な気分になる絵本です。
このお父さんはスゴイ。
木に化け、子どもを支え、色々な体験させてくれる。
そして一旦やらせだしたら、「きはなんにもいわないの」。
虫がいたり、すーくんが怖がっても。
子どもに口出ししないで見守ることができる、
お父さんの中には、大木のように揺らぎないものがある――
その大きな包容力に、あたたかい気持ちになれます。
すーくんは怖いけれど、一人で高い木からおりてきます。
いつの間にか木もお父さんの姿に戻っています。
ああ、ちゃんと戻れるのね、と安心。
その一方で、何事もなかったように歩き出すお父さんに
少し心がキュッとなります。
子どもに何でも口うるさく言ってしまう自分、その差がくっきりみえたから。
爽快な風景とともに、親の在り方を考える絵本です。