かっこいい男の子が(本人は自分を「ブ男」だと思っているそうですが)、フレンチブルドッグを連れて、桜の木を見上げている印象的な表紙です。つづく裏表紙には鹿が二頭。そう、ここは奈良です。東京から引っ越してきて、奈良の町や学校に何となく馴染めない男の子、陽太の物語。
ホームレスの男から迷い犬を託され、飼い主を探して町を歩き回る日々の中、陽太の中で何かが少しづつ変わっていきます。震災、原発問題、高齢者問題など、難しく大きな問題も色々と 陽太の日常や散歩に絡めて出てきますが、話の中にうまく熔けこんでいます。
作者は奈良市生まれ、さらに「現在フレンチブルドッグと同居中」とのことで、それらの実体験が物語の中に活かされていると思いました。散歩の途中での人々との触れ合い、また、同級生への淡い恋は微笑ましく温かい気持ちになれ、気持ちよく読める男の子の成長物語でした。