著者の館野さんは、今まで、生態がよくわからなかった「つちはんみょう」を8年の時をかけて観察し、その一生を丁寧、緻密、かつ迫力のある絵で描かれました。出版社からの紹介文にある「著者渾身の・・」という言葉が、本当にぴったりの絵本だと思いました。
小さな虫が本能に突き動かされ、生き抜くための行動をおこしていく不思議さ、いろんな生き物の行動と命が複雑に絡まりあっている様子、命をつなぐには、偶然(運命?)も大きく作用していること、そして、偶然を生き延びても今度は、種の命をつなぐための闘いがあること・・・。自然の中の、人の目の届かないところで繰り広げられているこのような様々なドラマを、館野さんの筆によって見せていただきました。
どのページの絵も素晴らしいですが、最後の2ページは特に印象的でした。漆黒をバックにし、真っ黄色の花粉団子の上で脱皮した真っ白なつちはんみょうの幼虫。それは、大きく深い宇宙の中の、ほんの小さな、でも輝いている命を見るようでした。