ぬいぐるみたちと男の子の、なんとも可愛らしいお話でした。
私が小さい頃、大好きなぬいぐるみを持って、姉と散歩していた時のことを思い出しました。
道端で突然、ノラ犬が私を襲ってきたのです。
私を、いえ犬が狙っていたのはそのぬいぐるみでした。
姉は「そのぬいぐるみを離して!」と叫び、私は急いでそうしました。
ぬいぐるみは無残な姿となり、私は恐ろしさとショックと悲しさでただひたすら泣きじゃくった、そんな記憶。
姉妹で育ったので、我が家にはたくさんのぬいぐるみがありました。
それぞれに名前があり、ぬいぐるみというより家族の一員のように大事にしていました。
きっと、絵本の男の子にとっても、「じょうさん」「ちりんさん」「らりろん」はかけがえのない家族だったに違いありません。
ぞう、きりん、らいおん、気が付くと、お話の中で「じょうさん」「ちりんさん」「らりろん」と変わっていました。
それぞれに男の子との特別な思い出があり、ぬいぐるみたちにとってもまた男の子は大事な存在だった。
離れてみて初めて分かること、ありますよね。
ぬいぐるみたちは勿論、屋根裏のねずみも、泣き虫なあのこも、一つ一つのエピソードも、ユーモラスな会話も、よみがえる子どもの頃の思い出も・・すべてが愛おしくて抱きしめたくなる、そんな絵本でした。
酒井駒子さんの挿絵も本当に素晴らしいです。
とても丁寧に描かれていて、作品に込められた愛情が感じられます。
出来ることなら、すべてのイラストをポストカードにしてもらいたいくらい。
お話にピッタリ合っていて、まさに珠玉の作品です。