こういう作品が読みたかった!が、読後の最初の感想です。
ドガは19世紀半ばに活躍したフランス印象派画家で、バレエの踊り子と浴女を題材にした作品が多いということくらいしか知りませんでした。
モデルらの一瞬見せた何気ない動作を永遠化する素描力は秀逸であるという点は良く耳にします。
網膜の病気を患い外に出ることがままならなかったことから、彼の作品となる対象は徹底してインドア的作品が多かったようです。
それもルネサンスの巨匠や、熱烈に信奉したアングルの画風で都会生活を描き出すことから、ドガは「現代生活の古典画家」と自らを位置付けていたそうです。
そのドガの晩年、視力の衰えもあり、踊り子・馬などを題材とした彫刻作品も残しています。
それらはドガの死後アトリエから発見されました。
この彫刻「14歳の小さな踊り子」は、ドガが生前唯一発表した彫刻作品だそうです。
このモデルとなった少女マリーを主人公にお話は展開します。
気難し屋で癇癪持ちのドガのモデルを引き受けた、マリーの家の経済的事情。
描きたいのに視力を失いつつある老画家と踊りたいのにモデル代ではまかないきれない月謝のために、トウシューズを脱がざるを得なくなる
幼いバレリーナの心の交流が、一本のピンクのリボンを介して見事に描かれています。
訳者の阿部先生のこの作品への取り組む姿勢を知り、今後のご活躍にも期待したいと思いました。