クモって不思議な生き物です。
見た目はもちろん、「蜘蛛」という漢字にも怖いイメージがあります。
一方で益虫でもあり、朝蜘蛛は特に縁起が良いと言われます。
この絵本の主人公は、そんなクモのシルバーくん。
なんと自分の糸で素敵な作品を作る、まさに小さな芸術家です。
でも美術館にクモの巣をかけると、美術館の人は(これは大抵誰でもそうですが)すぐに振り落としてしまいます。
そんな中、シルバーくんのことを理解してくれて、額まで作ってくれた優しい守衛のノンビリさん。
ところが美術館の人に追い出されてしまいます。
美術館の人もシルバーくんの作品の素晴らしさに気付き、展覧会まで開いてくれましたが、それは所詮人集めのため。
どんなに立派な金の額縁に銀色の糸で美しい作品を作ったとしても、疲れ切ったシルバーくんにはもはや喜びはありませんでした。
多くの人に見てもらわなくても、大好きなノンビリさんの部屋でゆっくりと好きな作品を作る、そんな時間がシルバーくんには大切だったのですね。
心温まるお話に、落ち着いた色遣いの挿絵がピッタリ合っていて、優しい気持ちになれました。