佐々木マキさんの絵は、くっきりと描かれていてとても楽しく感じる部分と、どこかに斜に構えたニヒルさの部分があるように思います。
この絵本のオオカミに、佐々木さんは一つのアイデンティティを与えているようですが、なぜかこの本はシルエットで、オオカミの表情は隠されています。
表情を読者に想像させつつ、存在感としては重さと曖昧さが残ります。
なにしろ、世界に一匹だけ残ったオオカミの子どもなのです。
自分の居場所、仲間をもとめてさまようオオカミの影。
いろいろなことを思いつつ、「ケッ!」と一言で自分を表現していまう、すれたところも見受けられます。
このオオカミは親の愛情を知らないで育ったのでしょうか。
あちこちをさまよいながら、自分はやっぱりオオカミなのだ、と何となく納得するところ、なんとなく愉快さを感じてくるところ、なんだか、とても存在感とインパクトがあるアイロニーです。
充分に分析はできていないのですが、充分に存在感のある絵本です。