初めて読んだときは25歳くらいで、宮沢賢治の短編集でした。電車の中で涙を隠して読んだのを覚えています。宮沢賢治の作品で1番好きなお話でした。40歳で絵本を見つけてとても嬉しかったです。そしてやっぱり心もまぶたもじーんと熱くなりました。
一本のいちょうの木のお母さんとたくさんのぎんなんの子どもたち。旅立ちという別れが優しく、悲しく、いとおしくかかれています。
ぎんなんの子どもたちはお母さんを安心させるために支度をせっせとします。お互いの持ち物や服装、気持ち、を思いやり、いたわりあい、励ましあって時を待ちます。
ひとつぶのこどもは旅立ったら王様になりお母さんと兄弟を迎えに来ると語り、もうひとつぶはカラスに乗って旅をすると夢を語ります。
いろいろ語り合う子供たちに反し、始めから最後までいちょうのお母さんの言葉は一言もありません。しかし子どもたちの会話から、成長した子どもを嬉しく誇りに思い、旅立つ行く末を心配し、別れを心の奥底から悲しんでいることがわかります。「母」というしんの強さ、愛情の深さ、慈しみのあたたかさが伝わってくる短い文章も印象的です。
いちょうからぎんなんが落ちるというほんのなんでもない自然のことが、透き通ったなにかの食べ物を食べた賢治さんだから感じれたことに思えてなりません。
目に見えない大切なものを子どもと感じれるようこれからも絵本を読んでいきたいです。