「本は大切にあつかいなさいよ」、そんな小言を子どもたちに言ったことはありませんか。
でも、お願いですから、この絵本に限ってはそう言わないで下さい。
むしろ、「本全部を使って遊んでいいよ」と言ってあげてください。子どもたちにこの絵本を渡した瞬間、子どもたちは身体いっぱい使って、この本と遊ぶにちがいありません。
押したり、揺すったり、立てたり・・・。
でも、驚かないで。それでいいのです、この絵本はそういう作品なのですから。
そもそもこの絵本には「これは、よむほんでは ありません」と、はっきり書かれています。
本だから「読む」もの、というのは誰が考えたのでしょうね。
本はもっと自由でいいのではないでしょうか。
この絵本では「まるで いきているような」、黄や赤や青の「まるを つかって あそぶ」ようにできています。
遊ぶ? 絵本で遊ぶ? そうです。絵本で遊ぶのです。
少し遊んでみませんか。
白いページに黄色いまるがひとつ。「きいろいまるを おして つぎへ いこう」と書かれています。
さっそく、黄色いまるをおして、次のページをひらくと、あれれ、黄色いまるが二つに。
これって、おとなの人たちが夢中になっているスマホみたいですね。
指一本で世界が変わっていく。
もっとページをひらいていきましょう。
左のページに黄や赤や青のまるがかたまっています。「みぎに かたむけたら・・・? やってみる?」と書かれています。
もちろん、やってみます。右に傾けて、ページをひらくと、あらら、黄や赤や青のまるは右のページにうつっています。
この絵本はただ単にページをひらくものではありません。
絵本全部で遊ぶ本なんです。
そして、大きな世界を感じる絵本なんです。だって、子どもたちの手の中にあるこの絵本は生きているのですから。
フランスの絵本作家エルヴェ・テュレに日本の詩人の谷川俊太郎さんが訳した、これは「あそびのほん」です。
遊ぶって世界を知る、最初の一歩ですもの。