エメラルドグリーン色の美しい表紙、男の子がバイオリンを一心に弾く様子が描かれています。男の子の名前はアリ。11才。物語はアリの語りで進行します。
早くに父を亡くしたアリは母さんとおじいちゃんと暮らしていました。アリは、おじいちゃんからバイオリンを習い、「才能がある」と言われます。母さんはアリを連れてよく長期の旅に出ていました。そして、それがきっかけで、ドイツからオーストラリアに移り住むことになります。そこで母さんは再婚し、再婚相手と音楽カフェを始めました。
大好きなおじいちゃんと別れて暮らす寂しさ、父さんのことを知らない寂しさ、バイオリンの才能があるが故の悩み、バイオリンを弾く楽しさ、周りの人の優しさ、温かさ・・。そんな色々なことを感じつつ成長するアリの暮らしが描かれています。
そして、母さん、再婚相手のジェイミー、おじいちゃん、バイオリンのリー先生、たまたま知り合った金曜日の少年など、登場している人々がみな、それぞれ自分自身の人生を歩んでいることも丁寧に描かれています。読むことによって、子どもの心の内面の深さや、様々な魅力的な人々の人生にふれることができます。
物語が始まる前の献辞に「前途有為のヴァイオリニスト、ヨハネスに〜、<カフェ・ドンドン>のすてきな料理、おいしい音楽、よき思い出に〜」とあります。きっとモデルがいるのでしょう。アリとヨハネス、二人の少年の未来に幸あれ!