「贈られしひまはりの種は生え揃ひ葉を広げゆく初夏の光に」
これは、上皇さまが平成最後の2019年の歌会始に詠まれた歌で、
歌のなかにある「ひまわり」こそ、
この絵本『あの日をわすれない はるかのひまわり』で描かれた
阪神・淡路大震災のあとに神戸の被災地に咲いた花のこと。
皇居で花開いたひまわりは、
震災から10年の追悼式典の際に当時の天皇皇后さまご夫婦に贈られた種から育ったという。
この絵本は阪神・淡路大震災で犠牲となった、当時小学6年だった「はるか」ちゃんの姉である「いつか」さんや
その時に街のあちらこちらに種を蒔いた人たちへの聞き取り取材を得て、
フリーライターの指田和子さんが文を書き、鈴木びんこさんが絵を描いて2005年に出版されたものです。
阪神・淡路大震災は「ボランティア元年」と呼ばれてもいて、
この大きな震災をきっかけに日本ではボランティア活動が定着していきます。
この絵本では「ひまわり」の話もありますが、
ボランティア活動のこともきちんと描かれていて、
地震から二か月後、まだ体育館での避難生活をしていた受験生であった「いつか」ちゃんに、
あたたかいお弁当を差し入れてくれたボランティアの女性の姿も描かれています。
1995年に起こった阪神・淡路大震災から今年(2025年)で30年。
あの日のことを忘れないよう、毎年花を咲かせるひまわりと、
そのひまわりにまつわる話を描いた絵本が
いつまでも次の世代へと伝わることを願います。