
――いちかちゃんは、ぼーっとしているけど、おかしい子じゃないし、だからかわいそうでもありません。ちょっと、みんなとちがうだけです。
いちかちゃんは、ぼくと同い年のいとこです。ぼくのほうが、2か月おそく生まれたけれど、おかあさんも、いちかちゃんのおばさんも、ぼくをとってもたよりにしています。なぜならいちかちゃんは、いつもぼーっとしているからです。ぼーっとしているから、いちかちゃんはしょっちゅうわすれものをするし、あんまりお友だちとも遊びません。学校の先生は、毎日なんどもいちかちゃんの名前を呼びます。でも、いちかちゃんは、ちっとも気にしていません。ぼくは、そんないちかちゃんを、ひそかにさいきょうだと思っています。秋のある日曜日。お母さんにおつかいをたのまれたぼくが歩いていると……。
読者に「だれかの気もちになって考えることの大切さ」を伝える児童文学。
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