![みどころ](/images/shoukai_midokoro.gif)
「もしもし?」「もしもし おかあさん?」……ある夜、空からおりてきた糸でんわは、天国の男の子とおかあさんをつなぎます。「おやつ なに食べたい?」「もしもし? 晴れたら どこに行きたいかな」
ずっと問いかけたかった言葉を、糸でんわの向こうへつぶやくお母さん。男の子もまた、大好きなお母さんと話したいと願っていました。「おやつは、マシュマロかな」「晴れたら、お砂場! そのあとすべり台!」
ひそやかな夜のおしゃべりはつづきます。雲の隙間から、男の子がゆっくりおろす糸でんわ。お母さんは、もう一度男の子を抱っこできたらどんなに嬉しいかと願いながら、たよりない糸の先の、男の子の声に耳をかたむけます……。
くすんだ薔薇のような赤ピンク色で、お母さんの言葉は左ページに、男の子の言葉は青緑色で右ページにそれぞれ控えめに印刷され、スケッチのような、小さな絵が添えられています。 絵と文は、共にtomoyo(ともよ)さん。3人の男の子のお母さんで、3男が1歳のときに突然他界したことをきっかけに、本書を執筆したそうです。
糸でんわの向こうで、生まれ変わった友だちのことを話し、「ぼくはね ぼくの そのときを 待っているんだ」と言う男の子。「すべてはだいじょうぶなんだ」「心の奥ふかくに たいせつに しまわれるから」「ずっと そばにいるよ」……。
多く人はあまり語らないけれど、幼いわが子と別れた経験がある人は、少なくないのではないでしょうか。ページをめくり、自分だけの糸でんわを探るうちに、きっといつかは、大切な人を亡くした悲しい心に、向き合っていけそうな気がします。 命の儚さと神秘、今ここに命がある奇跡に思いを馳せたくなる……そんな小さな絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
![出版社からの紹介](/images/shoukai_shuppansha.gif)
天国にお散歩に行った男の子は、大好きなおかあさんとまたお話ししたいと願う。おかあさんもまた、男の子ともう一度話したいと願っていた。するとある夜、空から糸でんわが降りてきた。おかあさんが糸でんわを手にすると男の子の声が聞こえてきた。そして男の子とおかあさんの、おしゃべりが始まる――。
“こども”とは、どんな存在でしょうか? 私は歯科医師という職業を通して“こども”という存在と触れ合う機会が増えました。そして“こども”という存在に未来のワクワクや楽しみを感じるようになったとき、“我が子”を授かりました。兄弟や姉妹に憧れていた一人っ子育ちの私は、やがて3人の男の子の母となりました。そしてあるとき、1つのきっかけから絵本を描きたいと思うようになったのです。そのきっかけとは、三男の突然の他界でした。この絵本の主人公は、天国へお散歩に行った男の子です。その男の子が、大好きなおかあさんとまたお話をしたいと願い、おかあさんもまた、男の子と話したいと願っていました。するとある夜、空から糸でんわが降りてきました。その日から、男の子とおかあさんのおしゃべりが始まります。今どんなところにいて何をして過ごしているのか、お散歩中に出会ったおともだちの話、家族の想いなどを話すのです。このお話で伝えたいこと。それは、「見えなくてもそばにいるよ」のメッセージが常にこどもたちから送られているということです。そして彼らは、いつだって家族や大切な人のすぐそばにいて話しかけています。時には、お気に入りのぬいぐるみを抱えながら、あるいは家族との思い出を胸に抱きながら。我が子が天国へお散歩に行ったとき、きっといつも雲の上から見てくれているんだろうなあと思いながらも、「そばにいるんだ」と信じられるようなメッセージが聴きたい。この絵本は、そんなメッセージを受け取ったとしたら、家族にちょっぴり楽しみが増えるかもしれない、あるいは心から前向きに生きられるかもしれない。そんな想いで描きました。
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