![みどころ](/images/shoukai_midokoro.gif)
主人公は、声変わりの自分の声に悩まされる小学5年生の「令」。あるときから、自分が「トロイガルト」という国の死刑囚「レイン」である夢をみるようになります。そこでは、羽が生えた熊「ハネクマ」たちの管理のもと、たくさんの死刑囚が死を当然のこととして過ごしています。そんな中、トロイガルトの監獄で、死ぬことを受け入れない死刑囚「シグ」が現れ……。 一方、現実世界の学校では合唱コンクールがせまり、声が出ないままの令は、歌うことから逃げようとしていました。
現実と夢の世界が交互に描かれ、徐々にリンクしていきます。 一見全く関わらなそうなふたつの世界が繋がっていくことに驚き、現実世界の登場人物が夢の世界の誰なのか明らかになっていく過程や、意外な展開にワクワクしながら、夢中で読み進めてしまうことでしょう。 「おとなになるって、ほんとのじぶんを、どんどん殺していかなきゃいけないって、おもう。」 これは、トロイガルトの世界のヒントとなる、令の同級生の言葉。 レインたちは、どうやったらそこから出られるのか、トロイガルトとはいったい何なのか。謎を解き明かしながら物語は結末に向かい、現実の自分と向き合い、本当の望みを認めること、そして未来への希望が描かれていきます。
圧倒される世界観と、登場人物のセリフに心に残る表現が散りばめられているのが、斎藤倫さんの作品ならでは。本そのものもとても美しく、挿絵は花松あゆみさんによるゴム版画、装丁は名久井直子さんが手がけています。現実世界の挿絵は黒、夢の世界は青で描かれていて、物語が装丁に繋がっているところも大きな魅力です。 哲学的な雰囲気のある長編で、読み応えもありますが、ファンタジー好きには特に没頭して楽しめる一冊。大人になることに戸惑っている年代の子どもたちと、大人にもぜひ読んでほしい物語です。
(掛川晶子 絵本ナビ編集部)
![出版社からの紹介](/images/shoukai_shuppansha.gif)
斉藤倫、待望の長篇書き下ろし。きみは、だれかの夢。きみは、だれかの未来。小学5年生の令は、ある日、トロイガルトという国の死刑囚レインとなった夢をみます。死ぬことを当たり前のように受け入れているその世界で、「わたしは、しなない」という少女シグに出会い、いつしか彼女をたすけたいと思うように・・・。一方現実での令は、合唱コンクールがせまる中、声変わりをからかわれ、歌うことから、自分と向きあうことから、目を背けようとします。しかしクラスメイトにたすけられ、たどりついた自分の新しい声は、ずっとそばにあったレインの声でした。その声に共鳴するかのように、夢と現実が重なりあい、やがて周りにいる人の記憶と世界の扉を開いていく――。子どもたちが未来に光をみつける、希望を描いた物語。
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