世界26か国の食べものを紹介した、楽しい大判絵本!
春をつげる風を追いかけて、わたしは走る。そして……。 毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介するのは『はるいちばん』。読み終われば全身で風を受け止めたような気持ちになれるこの絵本、どんな内容なのでしょう。
NEXTプラチナブックとは…?
絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。
そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。
みどころ
窓をあけ、ひゅーっと入ってくるのはぬるい風。
「きょうだ」
女の子は家を飛び出し、一目散にどこかに向かって駆けていく。追い風に背中を押されながら漁港を抜け、大きな川も飛び越えて、山道やトンネルだって駆け抜ける。やがてその視線の先に見えてきたのは大きな灯台。その脇道をまわりこみ、女の子は手を広げる。そして……?
今日はなにかが違う。
なんて気持ちのいい絵本なのでしょう。主人公の女の子の目的はただひとつ。春一番を自分の身で受けとめ、つかまえること。
「さあ、こいっ!」
海の町に住む彼女にとって、おそらく風から季節や天気を読むことはお手のもの。その表情はずっと凛々しく頼もしく、かっこいい。読者はただ女の子のうしろをついていき、ページをめくってその緊張の瞬間を迎えるだけ。そして、不思議な開放感に包まれながら絵本をとじ、満足するのです。
春を迎える季節だけでなく。少し立ち止まった時には、この絵本を手に取って、駆け抜ける風をあびてみる。そんな一冊になってくれそうです。
劇的な出来事というのは…
ひたすら一つの方向に向かって走っていく。シンプルなだけに、その疾走感がダイレクトに伝わってきます。けれど途中で見えてくるのは、女の子の住んでいる町の風景、生活、そして空気感まで。その温度や風の強さまでリアルに感じられるようです。それはきっと、作者が日常の暮らしを大切に感じながら制作をされているからなのでしょうね。どこにいたって「劇的な出来事」に出会うことができる。そんなことを思わせてくれる1冊です。
この書籍を作った人
兵庫県生まれ。大阪デザイナー専門学校卒業。四日市メリーゴーランドの絵本塾で絵本を学ぶ。主な絵本に『キャンプ!キャンプ!キャンプ!』(文研出版)、『えんぎもん』(風濤社)、『うみのいえのなつやすみ』(偕成社)、『ぼくのしんせき』(岩崎書店)などがある。
磯崎 園子(いそざき そのこ)
絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長として、絵本ナビコンテンツページの企画制作・インタビューなどを行っている。大手書店の絵本担当という前職の経験と、自身の子育て経験を活かし、絵本ナビのサイト内だけではなく新聞・雑誌・テレビ・インターネット等の各種メディアで「子育て」「絵本」をキーワードとした情報を発信している。著書に『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)がある。