絵本紹介
2022.12.16
「なんのために生きているの?」と聞くと、おばあちゃんは答えます。「それは自分で探さなくちゃいけないよ」。 毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介する絵本は、『なんなんなん?』。旅先できいた話を聞くうちに、ぼくは……。さて、どんな内容なのでしょう。
NEXTプラチナブックとは…?
絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。
そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。
みどころ
花たちに声をかけながら庭仕事をしているおばあちゃんに、ぼくは聞いてみる。
「ね、なんのために いきているのかな?」
おばあちゃんはなんなんなんでも知っている。
「なんなんなん……」
言いかけて、おばあちゃんはぼくにささやいた。
「そのこたえを さがすんだよ」
ぼくは旅に出た。出会った人たちに聞いてみる。
「なんなんなんのために いきているんだろう?」
漁師さん、俳優さん、町はずれのねこ、大工さん。みんながそれぞれ答えを持っている。ぼくはそれを聞いて、わかるようなわからないような。他の人にもどんどん話を聞いていく。そして、ある時出会った哲学者の話を聞いているうちに、ぼくはいてもたってもいられなくなって……。
おばあちゃんは小さかったぼくをぎゅっと抱きしめて「なんなんなん……」とささやきます。その答えは自分で探すのだという言葉を受け、ぼくは旅にでます。てくてく、てくてくてく。
旅先で出会った人たちは、みんなそれぞれ自分の答えを持っています。そして、みんなぼくに言うのです。
「ちっとも わかっていませんね」
それでもある時、なにかを感じたぼくは、まっすぐ歩きだします。てくてく、てくてくてく。
アメリカのベストセラー作家のコンビによって生まれたこの絵本。作者のマック・バーネットは『アナベルとふしぎなけいと』(あすなろ書房)で、カーソン・エリスは『なずず このっぺ?』(フレーベル館)で、日本でも数多くの課題図書に選ばれており、広く読者を獲得しています。
「人は何のために生きているのか」。聞くと難解に思えるこの問いかけに、これ以上ないくらいシンプルに、けれど壮大なスケールで、全体的にユーモラスな雰囲気を漂わせながら答えてくれます。声に出して読めば、小さな子どもにも身近で楽しく読ませてくれるのは、アーサー・ビナードによるユニークな翻訳の効果もあるのでしょう。「なんなんなん?」というフレーズが、読み終わったあとにもずっと耳に残ります。
ぼくの旅は決して短いものではないけれど、大切なのは自分の中から何かが「わいてくる」ということ。そのためだったら、いつまででも旅は続けていられる。そんな風に思わせてくれるのです。
「なんなんなん?」の言葉の響きが
これから道を歩いていく子どもたちにも。道なかばの大人にも。「なんなんなん?」の言葉の響きは、自分の答えを探しだすための力になってくれるのではないでしょうか。すぐに見つからないからこそ、人生っておもしろい。人の出した答えがすぐに理解できないからこそ、人生って深みがある。そんなことを考えながら、私もてくてく、てくてく歩いていこうと思うのです。
この書籍を作った人
アメリカのカリフォルニア州に生まれ育ち、若くして文学に目覚める。ロサンゼルスの東、サン・ガブリエル山脈に抱かれるボモナ・カレッジで学び、創作を始める。数多くの児童文学作品を手がけ、絵本『アナベルとふしぎなけいと』(あすなろ書房)でボストングローブ・ホーンブック賞とE.B.ホワイト読み語り賞をダブル受賞する。同時にコルデコット賞オナーブックにも選ばれる。『サムとデイブ、あなをほる』(あすなろ書房)はコールデコット賞に輝く。『サンカクさん』『シカクさん』『マンマルさん』(以上クレヨンハウス)などマック・バーネットの絵本は世界30か国語に翻訳され、広く読まれている。
この書籍を作った人
カナダのブリティッシュコロンビア州に生まれ、アメリカのニューヨーク州に育つ。子どものころからさかんに絵を描き、イラストレーターを志す。ロッキー山脈を抱えるモンタナ州の大学で絵画を学び、卒業後、ロックバンドのポスターのイラストを手がけて注目される。トレントン・リー・スチュワート作『秘密結社ベネディクト団』(ヴィレッジブックス)など児童文学作品の挿絵を多く担当。最初の創作絵本『わたしのいえ』(偕成社)が話題を呼ぶ。つづいて昆虫たちの言語を編み出した『なずず このっぺ?』(フレーベル館)はコルデコット賞オナーブックに選ばれて世界各国で翻訳され、日本の課題図書にもなった。
この書籍を作った人
アメリカのミシガン州に生まれる。五大湖の魚と水生昆虫に親しんで育ち、高校生のころから詩を書き始める。ニューヨーク州の大学で英文学を学び、卒業と同時に来日、日本語でも詩作を始める。『釣り上げては』(思潮社)で中原中也賞、『ここが家だ ベン・シャーンの第五福竜丸』(集英社)で日本絵本賞、『さがしています』(童心社)で講談社出版文化賞絵本賞を受賞。翻訳絵本に『ほんとうのサーカス』(BL出版)などがある。
磯崎 園子(いそざき そのこ)
絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長として、絵本ナビコンテンツページの企画制作・インタビューなどを行っている。大手書店の絵本担当という前職の経験と、自身の子育て経験を活かし、絵本ナビのサイト内だけではなく新聞・雑誌・テレビ・インターネット等の各種メディアで「子育て」「絵本」をキーワードとした情報を発信している。著書に『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)、監修に『父母&保育園の先生おすすめの赤ちゃん絵本200冊』『父母&保育園の先生おすすめのシリーズ絵本200冊』(玄光社)がある。