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絵本紹介
2022.12.22
ふにゃーとしてぽてーとして、身の周りにあるものをゆっくり食べて、お尻から出して……。毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介するのは、『ナマコのばあちゃん』。ナマコを愛する絵本作家こしだミカさんが手がけたこの絵本、どんな内容なのでしょう。
NEXTプラチナブックとは…?
絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。
そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。
みどころ
大きな海の端っこで、のんきに暮らしているナマコのばあちゃん。ふにゃーとしてぽてーとして、身の周りにあるものをゆっくり食べて、お尻から出して……。そんなふうにのんびりしていたある日、海の底がブルンッと身震いし、海の水がもんどりうって、でんぐりがえった。めちゃくちゃになった海の中で、ぎゅうっと身をかたくしたナマコのばあちゃんは……?
ナマコのからだは、ちくわのようなシンプルな形。周りの砂を食べ、砂にくっついた栄養分だけを取り入れて、きれいになった砂をお尻から出し。そうやって生きているナマコのまわりは、海の水がきれいになるのです。
一方、陸の上では人間たちが一生懸命。
「もっとあかるく、もっとべんりに、もっとゆたかに」
そんな中、あの瞬間が訪れます。めちゃくちゃな海の中でも、ひたすらナマコのばあちゃんは食べて出して、食べて出して……。
長年ナマコを愛する絵本作家のこしだミカさんが、2011年の東日本大震災直後に自分の中から吹き出したという“ナマコのばあちゃん”の絵とおはなしを元に、完成させたというこの絵本。ただそこに生きているだけなのに、とんでもない展開になっていく。生命力に溢れたナマコの存在感、迫力に目が釘付けになってしまいます。
会議で勝手なことを言いあっている人間たちをよそに、大いなる海のどこかで、ナマコは今日もふにゃーとして、ぽてーとして、ゆーっくり、食べて出して、食べて出して……。うん、それでいいのかも。なんだか元気をもらえる絵本なのです。
こしだミカさんがナマコを描いた他の作品に、生物学者・本川達雄さんとの絵本『ナマコ天国』(偕成社)があります。こちらはナマコ情報がたっぷり詰まっている科学絵本。合わせてどうぞ!
知りたいと思ったら…
この絵本に登場する「ナマコのばあちゃん」は、とんでもないことをやってのけますが、普段はひっそりとマイペースで暮らすナマコ。私たちがその存在について考えることなんて、めったにありません。ところが、一度見てしまったら忘れることができないし、そのからだの仕組みについても知りたくて仕方がなくなってくるのです。この海で起きていることも、私たち人間が生きるべき道だって、頭の中をぐるぐるまわり始めてしまいます。誰かの中で、なにかの「きっかけ」となるような力のある絵本なのだと思います。
この書籍を作った人
1962年、大阪府生まれ。絵本作家、立体造形作家。自作の絵本に『アリのさんぽ』、『ねぬ』、『ほなまた』、『くものもいち』、『いたちのてがみ』、『でんきのビリビリ』、『ドンのくち』、『ひげじまん』、『ナマコのばあちゃん』、絵を担当した絵本に『カイロ団長』(宮沢賢治・作)、『ナマコ天国』(本川達雄・作)、『ねむろんろん』(村中李衣・文)、『うちのおかあちゃん』(小手鞠るい・作)がある。
磯崎 園子(いそざき そのこ)
絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長として、絵本ナビコンテンツページの企画制作・インタビューなどを行っている。大手書店の絵本担当という前職の経験と、自身の子育て経験を活かし、絵本ナビのサイト内だけではなく新聞・雑誌・テレビ・インターネット等の各種メディアで「子育て」「絵本」をキーワードとした情報を発信している。著書に『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)、監修に『父母&保育園の先生おすすめの赤ちゃん絵本200冊』『父母&保育園の先生おすすめのシリーズ絵本200冊』(玄光社)がある。