インタビュー
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2023.09.28
「せかいをかえるパンツを いっしょにかんがえてみないか!?」と、ゆかいなキャッチコピーが帯に踊る『パンツはかせと はつめいのほうそく』は、アイディアの法則を子どもたちにわかりやすく教えてくれる絵本です。
今まで頭をひねってうんうんと出していたアイディアが、9つの法則を知ると次から次へとわいてくる目からウロコ≠フ知識を子どもたちに伝えたいと思った、キリーロバ・ナージャさんをはじめとする制作陣の想いを、おはなしいただきました。
出版社からの内容紹介
パンツけんきゅうじょへようこそ!こまっていることを、はつめいでかいけつしたいなら……!? 9のつの法則を知ればアイディアがどんどんあふれてくる! これからの未知の世界を歩む子どもたちに伝えたいアイディアをうむためのヒントが詰まった絵本です。
この人にインタビューしました
ソ連(当時)レニングラード生まれ。数学者の父と物理学者の母の転勤とともに、6か国(ロシア、日本、イギリス、フランス、アメリカ、カナダ)の各国の地元校で教育を受けた。広告会社に入社後、様々な広告を企画し、2015年の世界のコピーライターランキング1位に。最近の仕事は、困った人をアイディアで助けること。絵本作品に『ナージャの5つのがっこう』(市原淳・絵/大日本図書)、『からあげビーチ』『ヒミツのひだりききクラブ』『じゃがいもへんなの』(以上、文響社)、『6か国転校生ナージャの発見』(集英社インターナショナル)がある。
この人にインタビューしました
イラストレーター。1980年生まれ。A&A青葉益輝広告制作室勤務の後独立。イラストレーターとして、ジャンルにとらわれずに幅広く活躍中。第3回グラフィック「1_WALL」ファイナリスト。近著に『SMALL STORY』(SUNNY BOY BOOKS)、『ねこがたいやきたべちゃった』(文・円城塔/アタシ社)『ガハクとブラシ』(小学館)がある。
───『パンツはかせと はつめいのほうそく』は、6つの国の現地校で学んだという、ナージャさんの経験から生まれたそうですね。
ナージャ:そうです。わたしは、ロシアに生まれて中学生になるまでの間、6か国の現地校で学びました。国が違うと、言葉もルールも、学ぶスピードも違っていて、「ふつう」のやりかたでは全然ついていけなかったんです。その逆境を乗り越えるときに頼りになったのが「アイディア」。手探りでいろんなアイディアを考えては試して、うまくいくと痛快でした。でも、学校では「アイディア」の作り方を、ほぼ教えていないんです。
───確かに、学芸会や学祭などで「アイディア」を出すことはあっても、そもそもの「アイディア」の作り方は教わりませんでした。
ナージャ:私が大人になって知ったひとつが、アレックス・F・オズボーンさんが作った発想の法則「オズボーンのチェックリスト」でした。転校した先で困っていたときにその法則を知っていたら、逆境はもっとちっぽけなものに見えたはず。だから、かつての私のように、逆境や困難の中で生きる子どもたち、これからの未知の世界を歩む子どもたちに、アイディアの作り方の法則を教えてあげたいと思ったのです。
───「オズボーンのチェックリスト」をインターネットで検索すると、経営学の記事がたくさんヒットします。大人向けではなく、子どもに向けた絵本を制作したのはなぜですか?
ナージャ:子どもの頭は、自然とクリエーティブ。アイディアの楽しさや使い方、周りの生活への役立ち方に気づいたら、その後の可能性がグンと広がると思うんです。その機会を、子どもたちに提供したいなと考えたからです。
───そのアイディアの法則を伝えるために選んだ題材が「パンツ」だったんですね。なぜ「パンツ」を題材にしようと思ったのですか?
ナージャ:実は最初の企画では、「子どもの発想力を刺激するような内容の本を考えよう」でした。発想することはすごくおもしろいけれど、自分にはできなさそうというハードルがあります。そのハードルを越えて、子どもたちの思いつきが止まらなくなってしまうようなモノってなんだろうとなったときに「パンツだ」と閃いたんです。
ナージャ:自分でも試しに、「オズボーンのチェックリスト」を使って「パンツ」について考えたら、おもしろくて、思いつきが止まらなくなって。そこで編集者さんや学校の先生たちに話をしてみたら、パンツを超えるネタはないとおもしろがってもらえたので、「パンツは最強だ」と実感しました。
───絵を描いたfancomiさんと、デザイナーの一森さんは、「パンツ」がテーマだと聞いたときは、どう思いましたか?
fancomi:絵本の題材にはうんちもよく登場するので、うんちに対抗できるのはパンツだなと思いました。子どもも、パンツは好きだろうなと。
一森:「パンツ」と聞いただけで、明るくておもしろそうな感じがしますよね。キャッチーで素敵なモチーフだなと思いました。
───パンツはかせのキャラクターデザインは、どのように決まっていったのでしょうか?
ナージャ:私が最初に描いたのは、パンツを頭にかぶったはかせです。
fancomi:その絵を見て、パンツの足が出ているところから耳を出すようなキャラクターから考え始めました。でもふと、「パンツをかぶってもいいのかな?」という疑問がわいて。
絵本の中では、たくさんかぶっているんですが(笑)、キャラクターならパンツそのものの方がいいかもと思って、パンツの形の顔をしたはかせの絵を何パターンか描きました。それをかわいく整理したのが、この絵です。助手のブリーフも、当初はパンツはかせとして考えていたものだったんです。
ナージャ:みんなでfancomiさんが描いたラフを見ながら、マッドサイエンティストなのに愛嬌がある、かわいすぎないけれどちょっとおもしろいキャラクターはどれだろう、という感じではかせのキャラクターを絞っていきました。
パンツの形が顔になるとわかりやすいし、いろんなモノになったときにおもしろくなりそうだと盛り上がって。そうやってワイワイ話す中で「せっかくおもしろいキャラクターができたから、助手がいて、ふたりでかけ合いみたいになるといいかも」いう新しいアイディアが出たので、タテ型パンツは助手に、トランクスはペットになりました。
───本作にはいろんなパンツが出て来ますが、基本的なパンツの形は足を出す部分のカーブが必ずありますね。このこだわりは、どなたのアイディアですか?
一森:それはfancomiさんです。私は9つの法則に当てはめたパンツのアイコンをデザインしたのですが、パンツをこんなに変えること自体が初めて(笑)。そこで「パンツ」と聞いたらみんなどんな想像をするのか、インターネットで「パンツ イラスト」を検索するとどんな絵が出てくるのかを調べて、結果をヒントにしてアイコンを作っていきました。
一森:アイコンを決めるところで偶然発覚したのが、fancomiさんのパンツのこだわりです。私が最初に作ったアイコンの中に、パンツのシルエットが五角形のようになっているパンツがありましたが、それを見たfancomiさんに「今回のパンツは、足を出すカーブが丸くなっているはかせの顔型が大事なんだ」と力説されました(笑)。
fancomi:僕の中の「パンツ」は、パンツをはいて、足がでているカーブのある形だったんです(笑)。
ナージャ:本当にたくさんの「パンツ」のアイディアを考え出しましたが、文字としてはおもしろいけれども、絵にしたときにイメージが伝わりづらいものもありました。だからみんなと一緒にアイディアを見て、絵にしたときに1枚で伝わるアイディアを残していったんです。その時にfancomiさんが、白いブリーフ型のパンツをベースにしたらどうかと提案してくれて。
fancomi:基本型があると、違うものになったときに「差」がわかりやすくなるなと思ったんです。ですから、あくまで記号として白いブリーフ型を使って展開していく。そうしないと、どうとでも描けてしまうので、やはり基本型は大切だと思います。
ナージャ:本当にそうですね。実は絵本のカバーも、基本のパンツ型になっているんですよ!
───本当ですね! しかもカバーの裏に「9つのはつめいのほうそく」が印刷されています。
ナージャ:一森さんがデザインしてくれたアイコンがどれもおもしろくて、「なんだこりゃ」とワクワクする感じがありました。子どもがひと目で、「この法則はこういうことなんだ!」という法則が、わかりやすくなっていたんです。お勉強っぽく見えないけれど、眺めているとワクワクするような、ポスターのように貼れる法則表が作れたらいいなと思ったので、カバー裏を利用しました。
一森:パンツ型にしようと提案したのは、私です。せっかく壁に貼るのなら、これもパンツにしちゃおうと。製本所のみなさんも初めての試みだったそうですが、カバーを機械で巻く作業が大変だったと伺いました。
編集者さんが「カバーがパンツの形なんですが、できますか?」と電話で説明してくださったのですが、先方も「パンツ!?」とびっくりしたと思います(笑)。でもおもしろがってくださって、実際にきちんとカバーを巻くことができたときは、感動しました! 絵本づくりに関わったみなさんの、パンツ愛が垣間見えた出来事でした。
───カバーを目につくところに置いておけば、なにか考えるときに「そういえばこんな法則があったな」とすぐに参考にできて便利です。そうやって使っていくうちに、アイディアの出し方が自然と身につきそうですね。
───絵本を作ってみて、いかがでしたか?
fancomi:僕もアイディアを出す仕事をしていますが、自分の考え方を明文化したことはなかったし、発想の法則もまったく知りませんでした。
「おおきくする」とか「くみあわせる」などは仕事でやってきましたが、論理的な思考ではなく、なんとなく「こうやったらおもしろいだろうな」という感覚だったので、それが法則だったとは驚きましたね(笑)。ですから、絵本を読む前と読んだ後では、考え方が変わるなと思いました。子どもたちが初めからこの法則を知っていたら、考え方のヒントになると思います。
ナージャ:法則を知らずになんとなく考えるだけでは、アイディアを思いつくときと、思いつかないときがあるんです。考えるのが好きな人は良いですが、考えることが好きではない人は諦めてしまう。そうなると、「アイディアは考えるのが得意な人がやればいいよね」となってしまうのが、もったいなくて。
fancomi:みんな、それぞれおもしろいネタを持っているはずなのにね。
ナージャ:法則を知って考え方を変えれば、みんなできるようになります。文学を学んだ人が全員すごい作家になったり、数学を学んだ人全員が天才数学者になったりしないかもしれしませんが、言葉や計算などは生活のいろんな場面で活用されていますよね。
大きな発明ではなくても、友達とけんかしちゃったときにどうやって仲直りしたらいいのかとか、夕飯になにを食べようとか、臨時のおこづかいをどうやっておねだりしようとか、なにかちょっとしたことをするときにも、発明の法則が使えるんですよ。
───なるほど、おかずに例えると、わかりやすいです! 例えばハンバーグカレーは、法則9の「くみあわせる」の発想から生まれたのかもしれないですね。
ナージャ:一見、ぶっ飛んだ発想やちょっとおバカに感じるアイディアも、本当は役に立ったり意味があったりするものだし、そこから発展して考えると、いろんなことができるようになる。だから子どもの、一番発想が豊かなときに法則の力を借りてアイディア発想を学ぶと、その自由な発想力を保ったまま大人になれるんじゃないのかな、と期待しています。
一森:私もデザインの仕事をしているので、アイディアを使う仕事だと思います。でも家族や親しい人と話していると、「アイディア出しは特別な人がするものだ」と思いこんでいて、距離があるなと感じることがありました。『パンツはかせと はつめいのほうそく』は、考えることが得意な一部の人向けではなく、みんなのためにあるというのがすごく素敵だなと思っています。
あと、絵本の「みぢかなことから」というページがすごくいいなと思いました。
一森:奇想天外なたくさんのパンツの発明をひと通り眺めた後に、「ともだち100人となかよくするには?」、「だいにんきになる きゅうしょくのしんメニューは?」など、このテキストからもっと考えが始まる、すごいページだなと思っていて。そういう読後感がこの絵本にはあるので、デザインをするのが楽しかったです。
ナージャ:「パンツ」は興味を持たせてくれる入口やフックであって、「パンツ」をほかのなにかに置き換えて考えればだいじょうぶ。でもいきなりは難しいので、最後に「はつめいアイディアシート」をつけました。
ナージャ:シートに沿って考えると、ちゃんとステップを踏んで考えることができます。最初は普通に読んで、「こんなパンツもあるんだ」と笑って、想像力が刺激されたらうれしいです。そして、アイディアを出したり、発想することの楽しさに目覚める子が増えるといいなと思っています。
さらに言うと、1回自分で考えてみることにチャレンジして、自分も考えることができた、おもしろいアイディアを思いついたという体験をした、思いつかなかったらみんなでいっしょに考えてみようなど、アイディアに対するハードルが下がって、楽しさに出会える子が増えるといいなと思っています。ぜひ、この絵本を活用してください。
───ありがとうございました。
『パンツはかせと はつめいのほうそく』には、パンツはかせが発明した76種類のパンツが登場しています。その中でイチオシのお気に入りパンツを選んでいただきました!
ナージャ:アイディアを出すのに、私が一番やりやすかったのが法則9のくみあわせる≠ナした。絵本では見せるパンツになっていますが、最初はパンツを何枚もはいていて、脱いで渡す方式だったんです(笑)。
自分でもばかばかしいアイディアだなと思って、おもしろがっています。
fancomi:絵を描きながら「何やっているんだろう、何のためにこのパンツを発明したんだろう」と、思わず考えてしまったパンツです。
でもアイディアなので、「何のために」とか「役に立つ」という条件を取っ払って、もっと自由に発想していいんだと気づかされた逸品です(笑)。
一森:おはなしは、子どもがパンツはかせの研究所を訪れるところから始まりますが、はつめいのほうそくを教わる前に、研究所の中を見て回るシーンがあります。
そこに登場する発明品のひとつが「おんだんかストップ・パンツ」。字面だけではどんなパンツが想像がつかなかったのですが、fancomiさんが、白いパンツで地球をくるむという、壮大な絵にされていたので「おお!」とビックリ。
「パンツ」と聞くと身近なものを思い浮かべますが、こんなところまでパンツにしてしまうんだと感動しました。
みなさんもぜひ、絵本で自分のイチオシパンツを見つけてくださいね。もちろん、新しいパンツをどんどん発明してもOK!
そして、実は子どもといっしょにパンツおうこくにやって来た、ふたごのソックスにも注目してください。けっこういろんなところに、ソックスズが隠れていますよ。
すでに私の頭の中には、第2弾の構想もありますが、まずは『パンツはかせと はつめいのほうそく』を楽しんでください。
ナージャより
パンツはかせが、アイディアやひらめきのヒントを教えてくれる絵本「パンツはかせと はつめいのほうそく」に登場するアイディアシートを、読者の皆さんから募集します。
詳しくは、下の応募ページのボタンをクリック!
応募用のアイディアシートもDLできるので、みんなで挑戦してみよう♪