どうぶつのわかっていること・わかっていないこと(小学館集英社プロダクション)
「答えのない問いに向き合う力」をはぐくむ新感覚の絵本
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クリスマスの朝、小さな女の子ソフィーが窓から雪降る街を眺めています。
まわりの家ではパーティーの準備が進んでいますが、ソフィーのお父さんは仕事でいそがしくて、パーティーを開く時間がありません。
そこでソフィーは、すてきなことを探しに、外へと出かけます。
降りしきる雪のなか、ソフィーはヘラジカに出会い、大きな森へと誘われます。
青く凍った湖のほとりにポツンと立つ、小さなもみの木を見つけたソフィーは、とてもいいことを思いつきます!
作者のリンデ・ファースさんはオランダ出身の画家・絵本作家です。小さいころから北極の雪と氷の世界に憧れて、2017年からは北ノルウェーのトロムソに住んでいるそう。
本作には、ご自身が暮らす場所への愛情がつまっています。
リンデさんが実際に絵を描いているのがどのような場所なのか、彼女の動画で知ることができます。
クリスマスの時期、北極圏にあるトロムソは「極夜(きょくや)」と呼ばれる時期。
動画のなかも、絵本でも、雪の森が薄暗いのはそのためです。北極圏ならではの景色です。
さて、雪の降る森で、ソフィーはどんなクリスマスを過ごすでしょうか。
白、青、グレーがとけ合う色合いに、物語が進むと、ほのかなピンクや焚火の黄色が加わります。
そして、最後のシーンは鮮やかなオーロラが頭上いっぱいに広がります。
大自然のなかで味わうとくべつなひととき。
小さなソフィーを通して、北欧の大自然の懐の深さ、美しさをぜひ体感してください。
みどころ
あしたはクリスマス。でもソフィーのパパは仕事に追われて家の中はとても静か。クリスマスの朝、まだ暗くて寒いけれど、ソフィーはコートを着て外に出た。どこかで不思議で楽しい、特別ななにかに出会えるかもしれない、と。
雪のひとひらはどんどん大きくなって、やがて吹雪となり、激しい雪の嵐となったその中に、もじゃもじゃの毛の優しい目をしたヘラジカがあらわれた。
「わたしを のせてくれるの?」
ヘラジカの背中に乗ったソフィーはどんどん進み、知らない世界に入っていく。そこは今までに見たこともない大きな森。青く凍った湖のほとりにぽつんと立つ、ひとりぼっちの小さなもみの木を見たソフィーは、いいことを思いつきます! それは……。
ふりしきる雪、凍りつく森や湖、雪の中で元気に動き回る小さな動物たち、おどるオーロラ、そして光り輝くもみの木。小さな女の子ソフィーに連れられて、私たちも見たことのない、美しい北欧の森の奥の特別なクリスマスが目の前で繰り広げられます。なんだかそれは、これまでもずっとこうやってお祝いしてきたかのような。壮大だけれど、どこか懐かしいようなあたたかな時間。子ども時代に、そして大人になってからも。クリスマスの時期に開きたくなる一冊です。