●美術監督と絵本作家の二足のワラジ
─── 絵本は独学で学ばれたんですか?
そうですね。文溪堂さんと出会う前はページ数もテーマもかなりオリジナルでした。それを文溪堂の担当者さんが絵本のレールに乗るよう、一生懸命修正してくれたんです。
─── 『ブリと虹のほのお』と『カバサンチとアドバルーン』では、絵のタッチが違うように感じるのですが?
使っている画材は同じなんですが、『カバサンチとアドバルーン』には黒い線でキャラクターを縁取っているので、見た目の印象が違うと思います。
塗り方も『カバサンチとアドバルーン』は軽いタッチで塗るように意識しましたね。「ぎっしり描きすぎないで、空間を空けてください!」って編集からお願いされたので(笑)。
なんか、文溪堂さんでは、原画よりもラフのときの方が、評判が良いんですよ。適度に力が抜けていて。原画だとどうしても描き込みたい、埋め尽くしたいって変なサービス精神が出ちゃうんです。1枚、2枚は楽しいけど、全ページそれが続くと読者の方の息が詰まっちゃう。うまく力を抜く描き方を今後は見つけていかなきゃと思っています。
─── 阿部さんはアニメの美術監督という本職をお持ちですが、美術監督というのはどんなお仕事なんですか?
美術監督はキャラクターに合わせて、キャラの住む舞台設定をする。アニメの世界を生み出す係という感じです。
─── アニメの世界に入られたきっかけは?
元々、絵を描くのは大好きだったんです。小学校3年生くらいのときにゴッホの絵に出合って衝撃を受けて、油絵を使って絵の模写ばかりしている子どもだったんですよ。その頃にはすでに自分は絵を生業にするんだという自覚がありました。背景の世界に入ったのは高校生のとき。最初はアルバイトでした。当時の高校生の一般的なアルバイトって日給500円だったんです。でも、背景のバイトは1枚描くと500円もらえた。非常に割が良かったんです。僕は1日大抵10枚くらいは描けるから…かなり稼いでいたイヤな子どもでしたね(笑)。
それからずっと背景の仕事を続けて、23才のときにはもう美術監督だったんです。
だからアニメの世界ではあまり苦労していないんですよ。あんまり怒られたこともないし…絵本が一番怒られていますね…(笑)。
─── そうなんですか(笑)?
編集さんにああせい、こうせいとバンバンダメ出しされてますから…。もしかしたら、アニメ業界の監督よりも厳しいかもしれないですよ…(笑)。
─── それはきっと期待の表れに違いないと思います(笑)!
今までに2作の絵本を出してきて、改めて阿部さんが感じる絵本の魅力、面白さって何でしょうか?
いつも不思議に思うのは、発売から随分経った頃に売れ出す絵本があるじゃないですか。そういうのはアニメの世界にはほとんど見られないので、面白いですよね。
いつ発売されたか、古いか新しいかは関係ない、合う時代に来たときに再注目される可能性があることに魅力を感じます。
─── 今後はどのような絵本を作っていきたいですか?
まだ絵本作家になりたてなので…(笑)。これから本腰入れて、絵本作家を目指そうかなって思っています。今は『カバサンチとアドバルーン』の続編を構想中で、それを仕上げることが第一ですが、安野光雅さんやピカソのように、年齢によって色んなタッチが描ける、そういう絵本作家になりたいと思います。
─── ありがとうございます。阿部さんのご活躍を、今後も絵本ナビは追っていきたいと思います。今回ご紹介いただいた2作も大プッシュです!
本当ですか?そうしたら、このインタビューを見てくださった方に原画プレゼントしちゃいます!
─── うわ!本当ですか!?
はい。是非!
抽選で3名様に原画プレゼント!
【原画プレゼント告知】
対象期間中、絵本『カバサンチとアドバルーン』、『ブリと虹のほのお』をご購入された方の中から、抽選で各3名様(『カバサンチとアドバルーン』『ブリと虹のほのお』)に阿部行夫さん直筆の原画色紙をプレゼントいたします!!
皆さん、貴重なこの機会をお見逃しなく。
対象期間: 2012年8月2日(木)〜2012年8月16日(木)
←見本として私達にも描いていただいちゃいました!!本当にすごい原画です…
【Information】
©2012「グスコーブドリの伝記」製作委員会/ますむら・ひろし阿部さんが美術監督をされた映画「グスコーブドリの伝記」が全国公開中です。
7月7日全国ロードショー
【編集後記】
取材前に現在公開中の映画「グスコーブドリの伝記」を試写会で観させて頂きました。そのあまりにも壮大で美しい背景に圧倒されてしまって、こんなすごい美術監督さんに何をお伺いしたらいいのか…尻込みをしてしまいそうだったのです。
でも実際にお会いすると「新人絵本作家です」と声をかけてくださった阿部さん。そこでちょっと調子に乗って、「それでは、今日は期待の新人絵本作家にインタビューという形でいきます!」と強気の態度で(笑)楽しくインタビューを開始することができました!阿部さんの本業の方のお話を聞きたい方も沢山いらっしゃると思うのですが、今回はちょっと我慢してくださいね。
ありがとうございました!
(編集協力:木村春子)