
「木彫りの風来坊」とよばれるお坊さん。お経をよんでいるのを聞いたことがないが、木彫りの腕は天下一品。いままで、窮地を何度もこの腕できりぬけてきたのだから。さて、こたびは――。
何日も食べ物にありつけず、ふらりと立ち寄った村はずれの農家で「なんでもはたらくが、めしをくわしてくださらぬか」と願い出た風来坊。ところがここは、村で「かみなりばば」とよばれる、へんくつばあさんの家だったのです。 ばあさんにどなる隙もあたえないほどよく働く風来坊へ、娘が話しかけてきました。「お坊さん。よっぽどおうめばあちゃんに、気にいられたようだな」。 さちという娘は、かみなりばばが以前は昔話が得意なやさしいばあちゃんだったこと、じいちゃんが死に悪いことばかりつづいてあんなふうになったのだといいます。村の子たちにばあちゃんの昔話をきかせてやりたいんだ、と話すさちに、風来坊は…。 さあ、ここが風来坊の腕の見せどころ。朝のお社で、得意の木彫り道具を手にします。それは目にもとまらぬ早業で…!?
「落語絵本シリーズ」『うえきばちです』『地球をほる』などで多くのファンをもつ絵本作家・川端誠さん。この「風来坊」も根強い人気があるシリーズ。そしてなんと、16年ぶりの待望の新作です。 ちゃっかりものだけど、心やさしく正義感があるお坊さん。今回は、対決する忍者も侍も登場しませんが、テンポよく、ほろっとさせられる人情味たっぷりの風来坊が描かれます。 すみきった秋空の下、ひとはだ脱いだら、あとはのんびり旅の空。いつものように「おれは天下の風来坊」と決めぜりふ。子ども大人問わず、ぐっとひきつけて離さない「風来坊」の魅力を味わってくださいね。シリーズの他の作品も、読んで損しない名作ぞろいです。
(大和田佳世 絵本ナビライター)

村はずれの農家にとめてもらうことになった風来坊。ところがそこは、「かみなりばば」とよばれるへんくつばあさんの家だった。村娘のさちから、まえは昔話のとくいな、やさしいばあさんだったときいて……。木彫りの風来坊が活躍する人情味あふれるお話。今回は村娘のさちと協力して、夫に先立たれたおばあさんの心をなぐさめます。力強い絵も見ごたえがあり、読み聞かせにぴったりです。

おじいさんが亡くなってから悪いことが続き、嫌なお婆さんになってしまった…けれど、本当はお話がとってもうまいお婆さん。なんとか昔のようになって欲しいと願う娘と木彫りの風来坊のお坊さんがやったことは…?!読んだ後、何とも爽快な気分になりました。 (ままmamaママさん 30代・ママ 女の子8歳、女の子4歳、男の子2歳、女の子0歳)
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