継母とその娘にこき使われる毎日のシラーズは、ある日、風に乗って飛んでいった毛糸玉を追い、不気味な家を訪ねた。頼み事をやれば毛糸玉を返すという老婆の言葉に従い、一歩ふみ込むと・・・。美しい心のあり方を問うイランのお話。
表紙は一部、箔押しの技法を使って、金色で表現されていてとても美しく、豪華な感じがします。その表紙のタイトルの上に「イランのおはなし」とあります。作者はお母さんが語ってくれたこの話を、自分の子どもたちにもよく語ったということですが、いわゆる昔話なのでしょうか?
お話には、主人公シラーズ、そして継母とその娘がでてきます。シラーズは継母とその娘にいじめられています。ある日、シラーズが 近所の家でおばあさんと出会って不思議な体験をして王女のように美しくなって帰ってくると、継母は実の娘にも、同じ家に行ってくるようにと言います。ところが実の娘は、本人とは気づかれないほど貧相な顔立ちになって帰ってくるのです。
シラーズと実の娘は、何が違ったのでしょう?シラーズは、おばあさんのいいつけをその通りにやらずに、おばあさんの心の声に耳をすませ、おばあさんが本当に望んでいることをしたのです。実の娘は、おばあさんの本心には気がつかず、言葉で言われたことをそのまま実行したのでした。そして、このお話は教訓でむすばれています。「人は思ったことを素直にいうとは限らない。心の声に耳をすまし、その人が本当に望んでいることをするのが大事だ」と。
普通の昔話の展開に、ひとひねりある珍しいお話だと思いました。「人の話は鵜呑みにしてはいけない。なるほど・・」と、大人の私は、改めて 心しましたが、小さい子どもには、こういう心のあり方を理解するのはちょっと難しいかな?とも思いました。ただ、人の心の機微を学ぶにはいいお話かもしれません。 (なみ@えほんさん 50代・ママ )
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