12月、とある寒い冬の夜。 みーちゃんにとって今日は、待ちに待った特別な夜です。 なんてったって生まれてはじめて、オーケストラを聴きにいくんですから!
ママと選んだかわいいドレス、おそろいのリボン、よそゆきのコート―― 広いコンサートホール、大きなステージ、高い天井―― 今夜の演目は「歓喜の歌」で有名な、ベートーヴェンの交響曲第九番! 特別な夜の華やかな空気が、みーちゃんを包みます。
パパがオーケストラの指揮者という女の子、みーちゃんを通じて、オーケストラの魅力と音楽の喜びを伝える本作。 作者は、年末に行われる「一万人の第九」や、テレビ番組「題名のない音楽会」などで知られ、ウィーン・トーンキュンストラー管弦楽団の主席指揮者を勤める佐渡裕さん。 みーちゃんがオーケストラをどう味わい、どう心を動かされたのかが、実に子どもらしく率直な言葉で語られています。
そして、日本人が慣れ親しんだ第九の音楽性に、絵本として目で楽しめるように色をつけ、形を与えたのは、多彩なタッチでさまざまな味わいの絵本を生み出してきた、はたこうしろうさん。 楽章ごとに異なる、情感あふれた色彩とファンタジックな光景は、第九を聴いて想起したイメージの記憶と結びつき、かのメロディが耳によみがえるようです。
音楽の原初的な楽しみを、なんと雄弁に語った作品でしょう! そして、オーケストラコンサートの空気感を、なんとリアルに描いた作品なのでしょう! そわそわと浮き足立つコンサート直前の空気。 オーケストラの演奏をホールで、生で聴いたときの、衝撃と感動。 最後の音が消える瞬間の静けさ。 そのあとにわき起こる、拍手と熱狂。 そして、閉幕後の、うっとりとしていて喜びに満ちた余韻。 その全てが、繊細であたたかな色彩により、臨場感たっぷりに描き出されています。
みーちゃんの忘れることのできない特別な夜を、あたかもその場にいるように追体験させてくれる、音楽愛にあふれた一冊。 さあ、オーケストラコンサート、その魅惑の世界へ!
(堀井拓馬 小説家)
指揮者佐渡裕氏が初めててがけた絵本。主人公の女の子は小学生になって初めてコンサートに行きます。パパの指揮するベートーヴェンの『第九』交響曲を聴きに行くのです。一体オーケストラってどんなものなんだろう?
2011年にベルリンフィルを指揮し、現在オーストリアを代表するトーンキュンスト ラー管弦楽団音楽監督を務める世界的指揮者佐渡裕氏が初めて手がけた絵本。ひとり でも多くの子供たちにクラシックコンサートに足を運んで欲しいという思いがこもっ ています。絵は人気絵本画家のはたこうしろう氏。本作に登場する曲は日本人が一番 好むといわれる、歓喜の歌で有名なベートーヴェンの『第九』。主人公は7才の女の 子。お父さんは指揮者というお仕事をしている。でもお父さんの仕事って何?オーケス トラって何だろう。自分ははまだ未就学児童だったから演奏会に行けなくて、よくわ かりません。でも大丈夫。やっと小学校にあがったのです。今日はオーケストラの演奏会 に行ける日。おめかししてお母さんと一緒にコンサートホールへ向かいます。ホールに 入ると、そこにはたくさんの人、人。そしてたくさんの演奏家たち。舞台が暗くなりお父 さんが指揮台に立つと、素晴らしい時間が始まりました……。
おすすめです。
一人の女の子がちょっと大人の世界へ一歩踏み出す喜びと、オーケストラの音を初めて体感する喜びにあふれています。
特に曲が流れているページの絵は、素晴らしいです。
絵本から音が聞こえてくるようです。
指揮者のお父さんは佐渡さんにそっくりですね。
実際には、女の子と同じように着飾って、オーケストラに行くという幸せな体験ができる子は限られているかもしれません。
でも、この絵本なら、その幸せを疑似体験して、いつかは…という憧れを持つことができそうです。 (ピンピンさん 50代・その他の方 )
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