少女が引っ越してきたのは、縁もゆかりもない見知らぬ街。 お母さんは少女に言います。 「おともだち さがしてらっしゃい」 お父さんも少女に言います。 「だれかと あそんだかい」 近所のおばさんも少女に言います。 「おともだち できた?」 少女は答えます。 「うん できたよ」 その瞬間、世界は反転する。
直木賞作家・恩田陸と気鋭の絵本作家・石井聖岳が紡ぎだす、恐怖と妖美のコラボレーション!
『蜜蜂と遠雷』で第156回直木賞を受賞した恩田陸さんが文を書いた、少しぶきみな絵本。
どう不気味かというと、石井聖岳さんが描いた絵の表紙のどこかにそのヒントが隠れていますから、表紙だっておろそかにしないで。
初めての町に引っ越してきた女の子の一家。
外を見ると、なんだかぼんやり、どろっとしている町並みが続いています。
パパもママも「ともだちと遊んで」とかいいますが、この町には子どもの姿も声もありません。
ただ隣の犬がよく吠えるだけ。
そんな町でも女の子にともだちができます。
どんな?
ママには見えない。パパは気づかない。隣の犬だけにはわかっているような、そんなともだち。
この絵本は、ちょっと怖い。
でも、ともだちってつくらないといけないのだろうか。
ともだちができないことがまるでいけないことのようにいう人たちもいるけど、無理やりにつくることはないんじゃないかな。
まして、できたともだちがこの絵本の女の子のようにとっても不思議なともだちだってあるだろうし、そして、そのことでママは泣いたり(この絵本の中でもママは本当に泣いている)するけれど、そういうことが当たり前だと思うこと自体、なんだか怖い感じさえする。
この絵本はそんな当たり前の怖さを描いた、恩田陸さんの、ちょっと怖い話だ。 (夏の雨さん 60代・パパ )
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